『ターミネーター:ニュー・フェイト』映画評:サラ・コナーが世界を救う

ロケットランチャーを手にして、放浪することになるリンダ・ハミルトン(『ターミネーター:ニュー・フェイト』)Kerry Brown

『ターミネーター2』から27年後の世界を舞台にした最新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』がついに封切られた。この20年以上で窮地に陥った同シリーズの中で最高の続編を引っ提げて、リンダ・ハミルトンが戻ってきた。

【注:文中にネタバレを想起させる箇所が登場します】

「ターミネーター」のファンであれば誰でも話せることがある。ウェイトレスをしていたサラ・コナーは、ターミネーターという機械と敵対するレジスタンスの救世主となり、1992年公開の『ターミネーター2』のクライマックスでは、世界がディストピアンな瓦礫の山へと陥る原因のスカイネットの誕生を阻止し、30億人の命を救う。そして、仲間のロボットに対して信頼するようになり、アンドロイドでも思いやりを学べると気づいたことで、岩のように硬い腕の筋肉ではないにしても、彼女の心がほぐれた。最後には、サラは息子のジョンと一緒に未知なる未来へと駈け向かい、一時的ではあるが人類は絶滅から免れた未来を手に入れる。そして、幕が閉じる。

ところが、我々のこのヒロインが防げることができなかったことがある。「ターミネーター」シリーズが、続編を何度も放出できてしまう希望のない時間軸を作り出して、映画のブランド力を“希薄化”したことだ。間違いなく、『ターミネーター3』(2003)、『ターミネーター4』(2009)、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015)を擁護する人たちもいる。また、短命で終わってしまったTVドラマ『ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ』には献身的で熱狂的なファンもいるようだ。しかし、全体的に金儲けをしようとする感じが続編には立ち込めていて、大きな反響を生み出したジェームズ・キャメロンによる初期2作品で確立した世界(その世界をターミバース、もしくはTCUと名付けていいだろうか?)の中に本来のものとはかけ離れた作品が行き交ってしまっている。その状況下で、我々は救世主を必要としていた。その人物は歴史の流れを変えられる者であり、その結果、シリーズの新作が発表されても、やじや厳しい皮肉が誰の心にも湧き上がることはない。サラ・コナーよりも我々を救える最適の人物はいるだろうか? 窮地に陥った映画シリーズよ、もし生きていたいのであれば、彼女について行くんだ!

『ターミネーター:ニュー・フェイト』を今すぐ見るために急いで劇場に行くべき主な理由がリンダ・ハミルトンであると言うのは誇張でもなんでもない。グレースというキャラクターが危機を阻止する任務を帯びているが、そんなことを気にする必要はない。63歳となるリンダ・ハミルトンは、本作だけでなくシリーズ全体の本当の救いになっている。コナーと同じように、彼女は自分の役目を果たす上で助けを得た。まず、キャメロンは共同脚本家およびプロデューサーとして再び参加し、パート3以降に作り出された作品を“非王道”と断じた。そして、アーノルド・シュワルツェネッガーは新たな友人でもあり敵でもある機械として戻ってくる。マッケンジー・デイヴィス(『ホルト・アンド・キャッチ・ファイア 制御不能な夢と野心』)は現代に送り込まれる“増強した”守護天使のサイバネティック・スーパー・ソルジャーを演じ、ナタリア・レイエス(生まれながらのギャングを感動的に描いた大作『Birds of Passage』で主要キャラクターを演じたコロンビアの俳優)は、そのスーパー・ソルジャーがあらゆる犠牲を払ってでも守らなければならない若い女性を演じる。この2人の女性は素晴らしい新キャラだ。

また、主演のコナーが映画に登場するまでに、様々なシーン設定が行われている。90年代後半のフラッシュバックでは、デジタル加工され自然に若く見えるコナーが一瞬登場するが、この場面からわかることは、世界の終末を先送りにしたからといって、彼女は悲劇から免れられなかったことだ。また、グレース(デイヴィス)と容赦ない殺人マシーンの次世代モデルREV-9(ガブリエル・ルナ)が登場し、メキシコシティに住むダニー(レイエス)を2人が追いかける。ダニーは、かつてのサラのように、支配欲で暴走したAIとの未来の戦争に勝つためにキーとなる人物だ。強化された人間と液化する暗殺ロボットは、それぞれスレッジハンマーとオニキスのような刃に変形する腕を使って対決する。激しい逃走シーンは工場の壁を突き破るところから始まり、フリーウェイで車が爆破するところまで続く。監督のティム・ミラー(『デッドプール』)はアクションの演出には才能がある。彼は、キャメロン独特な全力を出し切って勝負に出るB級映画とまったく同じではないにしても、売れる映画を作ることができる。あらゆることが恒例のように十分に楽しく、ビジネス的には大ヒットしそうだ。

Translated by Koh Riverfield

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