miletが語る「孤独」との向き合い方、マンウィズとの共演、収穫に満ちた2019年 

milet(Courtesy of SME Records)

milet(ミレイ)の快進撃が続いている。今年8月の前作『us』はオリコンデジタルランキング初登場1位を記録。サマーソニック東京では朝イチの出番にもかかわらずSONIC STAGEは超満員に。最近ではMAN WITH A MISSIONとのコラボでも話題を集め、11月6日にはアニメ「ヴィンランド・サガ」の2期EDテーマ「Drown」など全4曲を収録した4th EP『Drown / You & I』をリリース。まもなく開催される初のワンマンライブは、東京・大阪どちらの公演も完売した。まさしく2019年を象徴するシンガーソングライターとなった彼女が、大躍進の一年を振り返る。


―今回の『Drown / You & I』は2019年3月のデビューから早くも4作目。前作『us』は夏っぽい感じでしたけど、今回のアーティスト写真は冬の装いですね。

milet:実はこれ、今年の2月には撮影してありました。その時点で『ヴィンランド・サガ』のお話もすでに決まっていて。

―かなりの長期プラン! 今回のEPも素晴らしかったです。

milet:ありがとうございます! 今回は内容的にもまとまっていると思います。特にテンポ感。どの曲も早い/遅いというより、ミドル感のあるテンポでビートも効いてて、全体的に浮いた曲がない。

―たしかに今回は、全4曲の流れがいい。

milet:最近は、制作中もリラックスできるようになってきたんですよ。前作までは「がんばるぞ!」って力みすぎていたというか。もちろん、今回もがんばったんですけど(笑)。いい意味で、肩の力を抜くことができている。その感じが(曲にも)出ているような気がしますね。


「Drown」MVはアメリカのカリフォルニア州で撮影

―1曲目の「Drown」、大自然を思わすスケール感でいきなりかっこよかったです。『ヴィンランド・サガ』のエンディング映像にもしっかりハマっていました。

milet:そうなんです。私も実際に見たのは、リアルタイムの本放送(新EDとなった10月6日放送の第13回)が初めてで。まさか、あそこまで血まみれとは……って驚きましたけど、かっこよかった~。

―「血がすごい」ってツイートしてましたよね(笑)。『ヴィンランド・サガ』はバイキングの生き様を描いた時代漫画ですけど、そちらも作曲するうえで意識しました?

milet:原作はかなり意識しました。全巻を読み込むのはかなり時間がかかったんです。絵が細かいし、いろんな登場人物が出てくるじゃないですか。話も難しいから何度も戻ったりして。

―ボリュームも結構ありますし(既刊22巻)。

milet:でも、すっごく面白かった! 時代背景は今と全然違うけど、やっぱり人間の気持ちというのは変わらないんだなって。風景も緻密に描かれているし、何より人物の表情がすべてを物語っていて。幸村誠先生の描く絵、胸に迫るような表情から感じ取りつつ曲にしていきました。今回は本当に「安産」でしたね(笑)。原作の絵と自分のイメージしている音がうまくハマって、するすると産まれてくれました。

―アニメの主題歌を手がけたのは2度目ですが、『バースデー・ワンダーランド』の時と比べてどうでしたか?

milet:大体は変わらなかったけど、今回はもっとフリーダムでしたね。『バースデー・ワンダーランド』でもオーダーは少なくて、オーケストラと合唱を使ってほしいというくらいでしたけど、「Drown」に関しては細かいリクエストはなかった。ただ、一つだけリファレンスでいただいたのが、エド・シーランの「I See Fire」。そこからミドルのテンポとギターの生音感、ドライな曲調や声のエフェクトだったりを汲み取って。大きなヒントを得ることができました。



―miletさんはリスナーとしてもドライな曲を好んでいるイメージがあって。それがいよいよ、自分のサウンドにも表れたのかなと。

milet:そうですね。ここまでドライな曲はこれまでなかったかも。「Drown」は私が「ドック」と呼んでいる、Ryosuke"Dr.R"Sakaiさんと一緒に作った曲で。彼もだいぶドライな感じが好きだから、何も言わなくてもドライに施されてました(笑)。そのドライ感が冬の寒さ、白い息が出るような空気感を演出して、自分の声を際立たせてくれたと思います。

―あと、毎週木曜に出演しているJ-WAVEのラジオ番組「SONAR MUSIC」でブラック・サバスの「Iron Man」やスリップノットの「Vermilion Pt. 2」をかけてたじゃないですか。あの2曲が持つ黄昏たムードも連想させられました。

milet:たしかにそうかも。乾いて突き放すような音とか、生々しいドラム、広がりのある音像……ダークな雰囲気のメタルっぽいサウンドは、もしかすると自分の中でアイデアをもらってたかもしれない。




―そもそも、miletさんがメタル好きなのも意外でした。

milet:スリップノットはもともと顔が好きで。顔から入っても好きになれるんですもんね。音楽。

―くるりの岸田さんもそうだと前回のインタビューで言ってましたよね(笑)。スリップノットの場合は被ってるマスクも好きだったそうですが。

milet:うん。でも今は曲が好き。そうそう、ラジオが自分のルーツを探る時間になっていて。ああやってラジオのネタ探しで曲を選んでると、「昔はああいうの聴いてたな」って引っ張り出すうち、その当時の感情まで思い出すんですよね。あと、T・レックスとか古い曲も流したりするんですけど、ラジオの収録で改めて聴くと、「ここのリバーブ感がいい」「ドラムの広がりがいい」とか改めて気づくことが多くて。それが今の作曲にも繋がってるところもあります。

―いい話! 最近もそういう再発見はありました?

milet:8月の「つい口ずさんでしまう鼻歌ソング」の回で、ベア・ミラーの「burning bridges」を紹介したのをきっかけに、彼女の曲を聴き直すようになって。そこから「brand new eyes」のMVが記憶に焼き付いたのが、今作の「You & I」に繋がっていますね。勢いや開放感がある一方で、ミドルテンポなんだけど落ち着いていて、声のトーンも張っていない。「You & I」は花王「フレア フレグランス &SPORTS」っていう新しい柔軟剤のCMソングなので、そちらの映像にも合いそうだなと。



―今回のEPだと、個人的にはその「You & I」が特に好きです。

milet:そうですか。乙女~!

―(笑)。この曲ではどんなことを歌おうとしたんですか?

milet:付き合う前の初々しさというよりは、お互いの気持ちも知ったうえで「ついに触れるよ」っていう瞬間の弾ける感じ。気持ちが一番高まるところでふと息を呑んでしまう、触れた瞬間に時が止まったみたいな。そんな一瞬のこと。



―そんなキュンとする曲が、石田ニコルさん出演のCMで流れるなんて最高ですね。

milet:ふふ(笑)。タッチすると軽やかにふわっとして、匂いが広がるようなイメージですね。いい香りって可視化するとしたら綺麗な色をしていると思うんですよ。CMのほうもちょっと大人っぽいけど可愛い色をしてたので。そんな色が出せる曲にできたらと思って。この曲のMVも素敵な色合いになりました。

―前回のインタビューでは、ラブソングを書くことの気恥ずかしさを語ってましたけど。

milet:今回は何も恥ずかしい!って思うことなく……書いちゃったな。(歌詞には)第三者の視点もあって、相手のことも知ってるから、気持ちに余裕をもって歌えた気がします。

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