ザ・ストラングラーズ、27年ぶりの単独公演で見せた鉄壁のバンド・サウンド

渋谷WWWで行われたザ・ストラングラーズの来日公演の模様(Photo by Hiroki Nishioka)

ザ・ストラングラーズが、単独公演としては1992年以来、実に27年ぶりとなるジャパンツアーを開催。メンバーにはジャン・ジャック・バーネル(ベース)、デイヴ・グリーンフィールド(キーボード)、バズ・ワーン(ギター)、そしてジェット・ブラックの後任ドラマーであるジム・マッコーリーが揃い、初日の渋谷WWW公演は見事ソールドアウト。元『CROSSBEAT』編集長、大谷英之氏によるライブレポートが到着した。

実に27年振り!! 2007年のサマーソニック、2010年のパンクスプリングといったフェスで日本には来ていたが、やはり単独来日は熱気が違う。場内は新旧のファンで埋め尽くされ、しかも初日の今夜はソールド・アウトだ。SEで「ワルツインブラック」が流れ出して大合唱に包まれる中で4人が登場。そこへいきなり「トイラー・オン・ザ・シー」が放たれて一気にレッド・ゾーンへ突入する。

ジャン・ジャック・バーネルの爆音ベースと、デイヴ・グリーンフィールドのマシンガン・キーボードを浴びているだけで、「やっぱストラングラーズ最高だ!!」と実感する。最近の曲も交えながら「グリップ」「ナイスン・スリージー」といったお馴染みのナンバーを披露。90年にはヒュー・コーンウェルが脱退してヴォーカルは3代目のバズ・ワーンとなり、今年で81歳になるジェット・ブラックは体調問題でツアーでのドラムはジム・マッコーリーに交替しているが、それでもストラングラーズの世界にブレがないのはさすがだ。特にバズのヴォーカルがヒュー時代の匂いも残しているので、長年の歴史を受け継ぎつつ、このバンドに新たな血を注入しているのである。

StranglersPhoto1@Hiroki Nishioka.jpg

中盤のハイライトは「ゴールデン・ブラウン」「オールウェイズ・ザ・サン」への流れだろう。「今日は暑いですね(笑)」とジャン・ジャックが呟いて美しい旋律が場内に流れると、攻撃的なパンク・バンドが全く別の顔になっていく。今回の来日に合わせて再発された『夢現』『オーラル・スカルプチャー』といった名盤の曲も、バズとジムという新しいラインナップによって見事に蘇ってくる。この時期の来日公演が実現してなかっただけに、日本のファンにとっては余計に鮮烈だ。

今年でバンド結成45年、ヒューが脱けてもう29年経つというのに、ストラングラーズは一度も活動を休止することなく今尚走り続けている。そんな長距離ランナーだからこそ醸し出す鉄壁のバンド・サウンドに衰えは一切感じられない。終盤に「サムシング・ベター・チェンジ」「ハンギング・アラウンド」「ノー・モア・ヒーローズ」といった初期の代表曲を披露したが、時折ジャン・ジャックが微笑んでいたように、今は音楽を楽しむ余裕すらあるぐらいだ。70年代に観たライヴではファンが投げた紙テープを場内に投げ返したほどピリピリしていたストラングラーズ。しかし2019年の彼らは、自らの足跡を噛み締めるように一音一音を紡ぎ出していく。そう、音楽そのものへの愛情──この長いキャリアを支えてきたのは、そんな当たり前のことだったのかもしれない。バズの額の汗をジャン・ジャックが拭く一幕があったりするなど、バンドのコンビネーションも絶好調。ストラングラーズのライヴはまだまだ続く。日本で観られる幸運に感謝しながら、明日もまた会場に来たい。

2019年11月3日 大谷英之



<来日公演情報>



The Stranglers Live In Japan 2019

11月3日(日)Shibuya WWW [SOLD OUT]
11月4日(祝)Shibuya WWW [SOLD OUT]
11月5日 (火)TSUTAYA O-WEST 残僅

Rolling Stone Japan 編集部

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