リサクリス、曇りなき実験精神を宿すハードコアの新女王

テイストはダークでも姿勢は明るい

-その「ヴァイヴス」についてなんですが、リサクリスさんの音楽はインダストリアルな質感なのに不思議と明るい雰囲気が漂っていますよね。

嬉しい、それ。自分は逆だと思っていたから。こんなに暗くて良いのかなって。

-ドライで明るいと思いますよ。なぜでしょう……ハードコアなものに対する愛が素直に出ているから、テイストはダークでも、その姿勢が明るく聞こえさせているのかもしれません。

私は放っておいたらどんどん内面に行っちゃうんで、デモからミックスをかける時にドロドロな暗さを取り除いていく作業をやっているんですよね。それが仕上げのポイントで。あと、ミックスしていくうちに当初は聞こえてなかった部分が聞こえてきて、その曲の性格がわかってくるから、また再調整して。その繰り返しですね。

-ちなみに、リサクリスさんにとって理想的なバンドの1stアルバムってどれですか?

ビートルズの1stアルバム(『Please Please Me』)です。あれってどうやら25時間で全部録り終えたみたい(*ほとんどの曲は一発録りだった)じゃないですか。でも、その手法をトレースするのではなく、私は彼らの自由な“マインド”を引き継ぎたかった。だから、新しいEPには一つの曲のいろんなバージョン、例えばオケをiPhoneで録ったものとかを入れているんです。あと前に、ステラ・マッカートニーのイベントで私がDJをやったんですよ。イエロー・サブマリンをテーマにしたコレクションのお披露目会だったんですが、その時に映画(『イエロー・サブマリン』)のDVDをいただいて、久しぶりに観てみたら、映像の色とかテイストが統一されていなくて「超自由じゃん!」って。私たちも同じ曲(「Senapi」)でMVを2バージョン作っていて、一つは私がiPhoneで撮っているからロケも光もバラバラなんですよね。でも、今回はそれでいいと思えた。

-自分の中でのクオリティの概念が変わった瞬間だったんですね。

私は洗練に対して、けっこうこだわりがある方だから。特に前のアルバム(『Akasaka』)とか。

-ではここで、Elto Klinherszの1stEP『SixPointTwo Dimension』に話を移しましょう。さっきプライマルの話が出ましたが、まさに僕は『Evil Heat』を思い出しました。バンドだけど、打ち込みのノリは残したんですね。

最初は打ち込みを完全にシャットアウトしたかったんですけど、メンバーがそういうテンションじゃなくて(笑)。「せっかくキャリアがあるのに、それを全部捨てるの? 『Akasaka』みたいな感じで作っていこうよ」って。私はそれを聞いて「マジすか」ってなったんだけど(笑)、たしかに私はそのスキルをずっと磨いてきたし、使わないのはもったいないなと。だから、(打ち込みに)ちょっと距離を置いたからこそ、以前よりも大好きになる、みたいな体験でしたね。自分がもっとギターとか上手くなったら、王道のバンド・サウンドをやるかもしれないですけど。



-今作には、『Akasaka』でも2曲で共演していたUCARY & THE VALENTINEをヴォーカル・ゲストに迎えていますね。相変わらず2人は見事な相性だなと思うのですが、彼女はリサさんにとってのミューズという感じですか?

本当は全編でもいいくらい。彼女のヴォーカルはやばすぎるから。でも、自分のバンドに専念させるわけにもいかないから、(UCARY & THE VALENTINEが参加するかどうかは)その曲の運命として捉えていますね。

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