TOTALFAT・Shunが語るblink-182「天性の華がある部分に憧れるのかもしれない」

パンクに惹かれる理由

―ブリンクという以上に、パンクそのものに対してインテリジェンスを大事にして聴かれてきたのは昔からずっとなんですか。

Shun:年齢を重ねるごとに、ですかね。もともと自分は洋楽が好きで、それきっかけで英語を勉強するようになったんですね。大学も英文科に入って。そこで、人が喋っている英語や洋楽の歌詞もパッとわかるようになってきて。「そういえば、あの頃聴いていたバンドたちは何を歌ってたんだろう」と思って聴き返してみると、やっぱりブリンクの歌詞がすごいってこともわかってきたんです。「俺が好きだったあの歌、こんなにスゲえこと歌ってたんだ」ってびっくりすることも多かったんですよ。

そういう意味でも、馬鹿で子供だった俺をパンクロックが大人に育ててくれたと思ってるんです。パンクに啓蒙されたというか……パンクが人生を教えてくれた。生きる道を教えてくれる先生的なものがパンクだったし、そこに必ずインテリジェンスがあったんですよ。で、やっぱりブリンクはそれを持ち合わせてるバンドなんですよね。

―今「啓蒙」「先生的」とおっしゃいましたけど、TOTALFATの音楽に目を向けると、パンク、メタル、ハードロック、ヒップホップ……とにかくヒロイズムを感じるものを吸収してきたバンドだと思うんですね。どのフレーズをとっても赤レンジャー的というか。まさに、人の手を取って導くものとしてパンクを捉えてきたバンドがTOTALFATだと思うんです。

Shun:そうですよね(笑)。それこそ昨日、この前の台風でダメージを食らった八王子に行ってきたんですけど――そこで土砂を掻き出して帰る時に、「今日の様子を撮影した写真を使っていいですか、今日の様子を書いてもいいですか、どんなふうに書いたらいいですか」って訊かれたんです。そこで俺は、「俺が一番カッコよく見えるように書いてください」って頼んだんです。

それがどういうことかって言うと、やっぱりボランティアって啓蒙の意味合いを持つものだと思ってるんですよ。啓蒙って、無知な人を賢くさせるっていう意味を持っていて。つまり、ボランティアとして自分が表に立つことの意味って、やる気がなかった人をやる気にさせることだと思うんです。で、パッと思いつく啓蒙の手段って、恐怖か憧れくらいのものなんですよね。「お前、明日大地震が起こった時にどうすべきかわからなくてもいいんだ?」って脅すように学ばせるのか、「カッコいいだろ? 素直に人のためになりたいと思ってこんなにいい汗流してるんだぜ!」って見せるのか。恐怖よりも憧れのほうがポジティヴなエネルギーを生むのはわかるじゃないですか。それが俺の思うヒロイズムなんです。で、それはTOTALFAT、もっと言えば俺の生き方としてずっと大事にしてきたところだと思うんですよね。

―だから、TOTALFATの音楽を解析していくと、どの要素もむちゃくちゃ極端に振り切れてるっていうことがわかってくるんですけど。

Shun:そうっすよね(笑)。

―でも、それが一本の束になっているところが素晴らしいと思うんです。そういう意味で、Shunさんのブリンクに対しての憧れはどういうところにあるんだと思いますか。

Shun:うーん………ブリンクに関して言えば、ヒロイズムっていう以上に、「天性の華」がある部分に憧れるのかもしれないですね。で、その「なんか華がある」っていう部分は全然解析できない(笑)。ただ、アメリカで彼らのライブを観てわかったのは、そこにいる2万人がAメロからサビまで全部歌えるんです。それで俺らは気づいたんですよ、「ブリンクって、THE BLUE HEARTSなんだ!」って。

―なるほど。

Shun:そこにはもちろん、あっちのユース世代の代弁的なものがあったとは思うんですけど。それがずっと染み付いていて、あっちでは誰もが歌えるものになってる。その時代時代でのリアルを体現し続けてきたバンドだから今があるっていうところは間違いないと思うんですよね。

―それに、大人になっていくことも拒まず歌にしていく潔さも、今は感じられますよね。

Shun:これは『California』の曲になっちゃいますけど、「Home Is Such A Lonely Place」の歌詞なんて泣いちゃいますもんね(笑)。いつもは心安らぐ家なのに、子供がサマースクールで出ていった家はこんなにも寂しい場所なのかって。幸せの裏側に、とてもロンリーな気持ちがあるんだねって。それもマークとトラヴィスの日常会話から生まれたもので。大人になったからこそ感じられる今のこともリアルな歌にしてる……そこがいいなって思うんですよね。

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