TOTALFAT・Shunが語るblink-182「天性の華がある部分に憧れるのかもしれない」

Shunから見たブリンクの変化

―これだけパンクバンド、ロックバンドに夢を見てきたShunさんからすると、この変化はどう映るんですか。

Shun:僕は、この変化がすごく知的なものに感じて。一般的にはパンクバンドやパンクそのものに対して「荒くれ者」とか「アウトロー」っていうイメージがあるけど、僕はそう思ってなくて。実はパンクって知的なものだと思ってるんです。Bad Religionをやってるブレット・ガーヴィッツが博士の資格を持っていることもわかりやすいですけど、インテリジェンスのある人間が世の中に発信するものじゃないと、僕はカッコいいと思わない。そのサウンドメイキングにも、皮肉的なところにも、知的さって必ず宿ってくるものなんですよね。

だからblink-182が新しいことに着手していることに関しても、パブリックイメージがすでにあるバンドが敢えてそれを外すにはインテリジェンスが不可欠だったと思うし、ブリンクは知的なバンドであるっていうことを証明していると思ったんです。

―あえて杓子定規的に言うと、パンクはお馬鹿でいいし遊び場でいいっていうイメージがあって、しかもそのイメージは90年代前半にブリンク自身が作ったとも言えますよね。だけど一見真逆に思える「インテリジェンス」がパンクには必要だと。

Shun:パンクは馬鹿でいいっていう発想って、パンクロックのセカンドウェーブだと思うんですよ。そういうイメージを作った主犯格はまさにブリンクかもしれないんですけど(笑)。それに救われた人もたくさんいると思うんですよ? 学校行きたくなかったヤツが「俺でもクラスのヒーローになれるかも」って思えたりとか。ただ、その副作用もあったと思うんですよね。あまりに「パンク=馬鹿でいい」って思われすぎたことによって、ブームは去っちゃったのかなっていう気がしていて。

まあ、もしかしたら「お馬鹿の音楽」のまま盛り上がり続けた可能性もあるかもしれないんだけど……でも、2001年の9.11が一番大きかったと思っていて。あの大規模なテロを境にして、特にアメリカの人たちは馬鹿になれる音楽から離れたと思うんですよね。実際、9.11以降はわかりやすくエモが主流になったじゃないですか。

―キッズのファッションもゴス化して、90年代のエモとは違う形で、無力感や諦観を背景にした「エモ」が表出していきましたよね。My Chemical Romanceを筆頭に。

Shun:そうそう。で、今度は黒人の大統領(バラク・オバマ)が誕生したことで、ブラックミュージックが勢いを増した。世の中の流れに対してアメリカの人はすごく敏感で、人種間のことが経済にも生活にも影響を及ぼすから、それはそのまま音楽をはじめとしたカルチャー全般の流れに映りやすいんですよね。で、そういう早い流れの中で生き残ったパンクバンドたちって、やっぱり知的さを感じさせる音楽にシフトしていったんですよ。

―ブリンクが『blink-182』をリリースしたのも9.11を経てのことでしたね。シリアスな作風だったし、なによりサウンドがそれまでとは一線を画す実験的なものでした。

Shun:時代に向き合って、変化することを恐れなかったというか。その中で、最初から世間に対するメッセージ性を持ってインテリジェンスに満ちた歌を歌ってきたBad Religion、NOFX、DESCENDENTSみたいなバンドはずっと時代の真ん中にいて。やっぱりこの人たちは間違ってなかったんだと思える。なんなら、Bad Religionは今こそ動員の数がさらに伸びてるわけじゃないですか。それが証明してると思うんです。

―逆に言えば、ブリンクがパンクを青春の遊び場にして、お馬鹿をしてもいいっていうイメージを作ったのも、上の世代に対する皮肉だったと思うんですね。「ただ唾を吐くだけがカッコいい」というイメージで定着してしまったのはまさに副作用だったとは思うんですけど。ただ、そこから着実にブリンクは変化してきた。それを横目に見ながらやってきた日本のパンクシーンに目を向けてみると、どういう闘い方をしてきたと感じられていますか。

Shun:いやあ……日本のパンクバンドで言うと、今話したような「パンクのインテリジェンス」を汲めずにガワだけを作っていた人のほうが多かったと思うんですよ。やっぱり真似事だけじゃ、ああはなれないわけです。ファッションとかも含めてブリンクは圧倒的にカッコよかったから、真似したくなるのもわかるんですけどね。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE