映画『ジョーカー』、この大ヒット作が目指すものは一体何なのか?

『ジョーカー』で主役を演じたホアキン・フェニックス(Photo by Niko TaverniseI)


やせ細った男の笑い顔が泣き顔へと変わり、ピエロのメイクをしながら流した涙でマスカラが一筋の線を作る。そんなホアキン・フェニックスを見る価値はあるだろうか。もちろん、ある。この作品はブランド認知度もさることながら、現代最高の俳優のひとりをキャスティングしてバットマンの天敵を演じさせたことに価値がある。その醜さには、彼がこれまで演じてきた数々の役と同様、110%の力が発揮されている。フェニックス演じるフレックは、社会的に虐げられた正真正銘の不器用な若者で、病の母親(『シックス・フィート・アンダー』のフランセス・コンロイ)と同居している。彼は他人の表情を読み取るのが苦手でコミュニケーションを上手く取れない。ピエロ仲間は彼を気の毒に思いながら、彼の態度に耐えている。その仲間のひとりが護身用にと彼に銃を渡した。深夜、地下鉄に乗っている時、大企業のサラリーマンたちが彼に絡んできた。フレックは自分の中にバーナード・ゲッツ(訳註:ニューヨークの地下鉄内で強盗しようとした少年たちを銃撃した人物)を感じた。ゴッサム・シティに国民的英雄が登場したのだ。そしてフレックは、天職を見つけた。

またフレックは、階下に住む女性ソフィー(ザジー・ビーツ)に好意を抱き、深夜トーク番組の司会者であるマレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)を父親のように慕っている。フランクリンは、実在の司会者であるジョニー・カーソンの毅然とした態度とデイヴィッド・レターマンの皮肉屋性質を併せ持ったような役どころだ。デ・ニーロ演じるマレー・フランクリンは、映画『キング・オブ・コメディ』のジェリー・ラングフォードに似通っている。同時に、野心を抱いたフレックと同映画のルパート・パプキンのイメージが重なるのは、決して偶然ではない。『ジョーカー』は、ギラギラした紫色のスーツもそうだが他から受けた影響をはっきりと出していない。本作品は「正典」ではないものの、主人公のキャラクターはファンの知っている、というより愛するディープなDCユニバースをベースにしている。バットマンとのつながりも見られる。間の悪い笑いを引き出すところなどは、トゥレット症を患ったフレックが感情を爆発させるのと似ている。さらにフレックの私的制裁を支持する白い面をかぶった人々によるデモのシーンは、ウォールストリートを占拠したデモ隊を彷彿させる。見方によっては通りでのデモ行進がゴッサム運動にも見えるし、インセルによるデモにも見える。彼は激しい暴力のカルチャーの謎を解くカギとなる、一年中怒りに満ちたピエロなのだ。

Translated by Smokva Tokyo

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