最新作『ポニー』をリリースしたレックス・オレンジ・カウンティ、LA公演のレポが到着

レックス・オレンジ・カウンティことアレックス・オコナー(Photo by: Andrew Lipovsky/NBC/NBCU Photo Bank/NBCUniversal via Getty Images)

イギリスの新鋭シンガー・ソングライター、レックス・オレンジ・カウンティが本日10月25日に3rdアルバム『ポニー』をリリース。作詞・作曲・録音・演奏のほぼすべてを自ら手がけたという今作には、ザ・フーやディアンジェロとの活動で知られるベーシストのピノ・パラディーノも参加したことで話題となっている。10月22日にLAのザ・ロキシーで開催された、最新ライブのレポートをお届けしよう。

10月22日、3rdアルバム『ポニー』の発表を3日後に控えたレックス・オレンジ・カウンティが、ロサンゼルスのザ・ロキシーで新曲のお披露目を兼ねた特別ライブを行なった。キャパシティ500人の老舗ライブハウスは、20代前後の男女で満杯だった。子馬のイラストがバックに掲げられたステージにホーン隊を含むバンドが登場し、続いてレックスが姿を現わすと、大歓声が巻き起こった。

彼がキーボードを弾きつつ始まったオープニング曲は、新作のポップなリード・シングル、「10/10」。頭から大合唱。歌い終えて拍手喝采を浴びたレックスは、「ニュー・アルバムが金曜日に出るんだ。新しい曲をやってもいいかな?」と言って、「ストレスト・アウト」を披露。しっとりとした弾き語りの曲だ。続いて「10/10」の次に発表された新曲「プルート・プロジェクター」。これも合唱になったが、その中でレックスのソウルフルな歌声が際立っていた。それからアップテンポの新曲「フェイス・トゥ・フェイス」へ。これも発表済みの曲で、観客は体を揺らしつつ一緒に歌っている。「もう一曲新曲を演奏してもいい?」と彼が再び尋ねて始まったのは、「ネバー・ハッド・ザ・ボールズ」。レックスのラップが聞けるリズミカルな曲だ。次の新曲「エヴリ・ウェイ」はロック寄りの曲で、レックスはギターをかき鳴らし、見事なギターソロも披露。彼が様々な引き出しを持っていることが分かる。

教師につけられたあだ名が「The OC」だったので、イギリス人なのにカリフォルニア州のオレンジ・カウンティをアーティスト名にしたというレックス(本名はアレクサンダー・オコナー)だが、彼の曲には、西海岸サーフミュージックに通じるムードがあると思う。ポップ、ソウル、ジャズ、ロックと様々なジャンルを融合した音楽でありながら、どの曲もレイドバックしていていて、どこかカリフォルニアの空気を感じさせる。それが少し鼻にかかった温かみのあるヴォーカルと相まって、非常に心地良い。その後は、ファンに馴染みの曲を連発。

「僕を嫌っても構わないよ、僕が君だったら、たぶん僕も僕を嫌ってると思うから」と歌う「アンタイトルド」は2017年発表の2ndアルバム『アプリコット・プリンセス』の収録曲だが、この曲のPVの自信なげな少年とは違い、ステージ上の彼は、ごく自然体でありながらもスターだった。1stアルバム『ビコーズ・ユー・ウィル・ネバー・ビー・フリー』の「コーデュロイ・ドリームズ」も大いに盛り上がり、「サンフラワー」では彼の掛け声に合わせて全観客がジャンプ、続く「ハピネス」も大合唱。この夜披露された新曲も含めて、レックスの曲は基本的に「自分語り」だ。彼が寝室でつぶやいていそうな、あるいは日記にしたためていそうな、自分の弱さを認める本音。そこには優しく繊細でロマンチストな彼の人柄が、にじみ出ている。そして、そんな私的な曲がライブではみんなの自分語りになっていた。観客は彼と共に、彼の心の声を自分達の声にして歌っていた。サウンドの心地良さ以上に、この点がレックスの音楽が愛されている理由かもしれない。

「この曲でお別れするよ」と言って始まった「ベスト・フレンド」と、拍手喝采に導かれて始まったアンコールの「ラヴィング・イズ・イージー」は、最大級の合唱となった。レックス・オレンジ・カウンティが、いよいよアメリカでも大ブレイク寸前であることを知らしめる素晴らしいショウだった。

文:鈴木美穂



<リリース情報>

レックス・オレンジ・カウンティ『ポニー』ジャケ写.jpg

レックス・オレンジ・カウンティ
『ポニー』
発売日:2019年10月25日(金)
https://lnk.to/ROCPONY

Rolling Stone Japan 編集部

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