PassCodeの変化を促す「感情」の重み

曲に引っ張られて人間としての内面も成長していけた

─このシングルを携えて全国ツアー『CLARITY Plus Tour19-20』が始まります。新曲をライブで聴けるという楽しみはひとつあると思いますが、このツアーでお客さんに何を見せていきたいですか?

南:自分の中で最近、ライブのやり方が変わったというか。以前は自分たちのこと、自分のことを話す場と考えることが多かったんですけど、今はもっと観てくれる人が戻ってきたいと思えるようなライブを作りたいなと思っていて。どれだけ辛いことがあっても「こういう日があるから幸せに思えるし頑張れるよね」っていうところに最後は持っていきたいと思って、最近はライブをやっています。以前だったらマイナスの気持ちのまま終わることも多くて、もっと頑張りたいのに、もっとやりたいのに、それが不完全燃焼じゃないですけど、ある意味負の感情のまま終わることが多かったんですよね。でも、最近はそういう負の感情も抱きしめて、もっと明日も頑張りたいよねって、前を向いたライブをできるようになったというか。先のことを見て、「こういう日が次も作れるならば、またその日まで頑張ろうよ」みたいなモチベーションでライブをすることが増えたんですよ。だから、ただ「PassCodeのライブ、楽しかったな」って終わっちゃうグループにしたくないし、直近でライブを観られる機会があったとしたら「先月観たからいいや」じゃなくて、「また観たい!」と思ってもらえるようなライブをしたいなと。もちろん広げていく意味で『ATLAS』を出したんですけど、それだけじゃなくて、PassCodeがもともと好きな人が「やっぱり戻りたい場所はPassCodeのライブだよね」と思ってもらえるようなツアーにしたいし、新しく観た人には「PassCode、いいな。また観たいな」と思ってもらえるようなグループにしたいなと思っています。

大上:(笑顔で拍手をする)

南:最近こういうことが多いんですよ(笑)。高嶋がいるときも、私が話すと大上と2人で拍手して褒めてくれるし。恥ずかしいですね(笑)。

大上:思っていることは一緒なんですけど、自分の中ではまとまりきれてないんですよ。それをまとめてきれいに代弁してくれるから(笑)。

南:でも、照れ臭いじゃないですか、同じグループのメンバーから拍手されるのは(笑)。

─気持ちをまとめて自分の中でわかりやすく伝えられるようになったことは、グループの活動に影響していると思いますか?

南:さっき『ZENITH』のときは曲に引っ張られるという話をしましたけど、『ZENITH』ツアーのときは本当にギラギラというか、負の感情のほうに振り切れていることが多かったんですね。もちろん、カッコいいグループとして見られたいのであれば、ああいう曲でああいうライブをすることが正しいのかもしれないですけど、「Ray」とか出していく間にあたたかみのあるグループになれてきたのかな、曲に引っ張られて人間としての内面も成長していけたのかなと思っていて。今までは私たちのことを知ってもらうことが難しいなと思っていて、それがフラストレーションとして溜まっていたんです。「なんで知ってもらえないんだろう? どういて好きになってもらえないんだろう? もっといけるはずなのになんで?」っていう感情をライブにぶつけることも多かったんですよ。でもそうじゃなくて、ライブに来てくれる人たちと最高の1日を作りたいという感情のほうが大きくなってきて。グループをやっている以上、いつかは終わりがやってくるじゃないですか。だから、こうやって続けているときぐらい明るいものを見せたいというか、この一瞬は絶対に楽しかったものとして残したくて。今あるものを大切に考えられるようになってきたことで、PassCode自体を大切にできるようになったし、それによってライブの雰囲気や作りや流れも変わってきたのかなと思いますね。

大上:ライブ映像を見返しても思うもんな。『ZENITH』ツアーのDVDを観ると本当にギラギラしてますし、どこか尖っているというかトゲトゲしくて。カッコいい部分もあるし、そこが好きという方ももちろんいらっしゃると思うんですけど、ずっとそれでいくにはしんどいと思うんですよね、観てる側もやる側も。だから、今みたいな形に変化してきたことは、私はすごくよかったなって思うんです。

南:シンプルに歳を重ねたから、というのもあると思うんですよね。反抗期を脱したみたいな(笑)。

大上:よかった、脱出して(笑)。でも、グループだったらその反抗期に解散しちゃうことも多いと思うんですけど、そこを脱出することができたことで本当に大きな壁を乗り越えることができたなって思いますね。

南:真正面からぶつかって痛い目も見たし、そこで避けずにちゃんと乗り越えたことで人としてもグループとしてもひとつ成長できたからこそ、新しいものを作ることができて、お客さんにも寄り添えて自分たちにも寄り添えて、というふうに成長できたのは本当にあの経験があったから。今となっては「おいしいものを食べられるし、ツアーはいいよね」みたいな感じなんですけどね(笑)。あのときはそんなことを言ってられる余裕もなかったので。

大上:『ZENITH』ツアー中は1本ライブが終わったら「ああ、また来週ツアーか」みたいに思っていたんですけど、今考えると本当に勿体なくて。ツアーってすごくいい経験なのに、そう考えていたことに対してずっと悔しさがあったんですけど、今はそうじゃなくなったのがうれしいです。前がそんな状態だったからこそ、今はいい状態でツアーを回れることが本当に幸せなことなんだなって、改めてわかるようになりましたから。

─年齢に話もありましたが、大人になっていろんな見方ができるようになったのも大きいんでしょうね。

南:以前よりも俯瞰でグループのことを見れるようになりましたしね。自分たちがやっていることなんですけど、「こうしたほうがグループにとって最善なのかな」とか「自分はこうしたいけど、もしかしたらこう見えているほうがいいんじゃないか」とか、もっと視野が広がったというか。今はPassCodeのことを全員で育てている感じ。4人だけじゃなくてチーム全員でPassCodeをどう持っていくかという話をずっとしていますね。

─『ATLAS』というシングルはまさにそういう作品になっていますしね。

南:そうですね。こういう取材でよく「最近いい感じですね?」とか「最近調子いいって聞きますよ?」とか言ってもらうことが多いんですけど、自分たちとしてはスピード感がまだまだ遅いなという感覚があって。まだまだ知ってもらえていないっていう思いが強いので、今は種を蒔く時期じゃないですけど、『ATLAS』という種を埋めて、それが成長したときにもっと大きいところで花開いていけるような曲になっていくんじゃないかと信じて、今は一生懸命土を掘って種を埋めているところです(笑)。

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