きっかけは『ニンジャバットマン』 アメリカン・ロック×日本のアニメ、異色コラボの裏側

─各エピソードの成り立ちはどのように決まっていったのでしょうか?

水崎:どの曲をどうしてくれっていうスタージルからのリクエストのはなかったです。けれどもアルバム全曲をアニメのMVに出来るのか?というのはプロジェクト全体の課題としてはあって。どの曲をアニメにすべきか、というのをまずスタージルに絞り込んでもらった中で、まず「Sing Along」とあと「A Good Look」のダンスナンバーはやろうということになりました。あとはラストの「Fastest Horse In Town」ですね。そこで、あの侍の女性キャラクターにまつわる話はまずそこに埋めていきました。

しかしながら、中途半端にそのミュージック・ビデオ化されてるものだけ存在しても、アルバム全部を映像というフォーマットとして公開できないという壁にもあたりまして。そこからは同じ世界観なんだけど一方ではこんなことが起きていた、という、いわゆるアナザー・エピソード的なものをゲスト・ディレクターに手がけて頂いてはどうかなっていうところに落ち着いていきました。結局、スタージルの意図通り、全部をMVにするというポイントに追い詰められていった感はあります(笑)。

森本:全体の世界観というのは(製作に入る前に)既に伺っていたので。それを踏まえて、30年後でも100年後でも通じるようなシンプルなエピソードに仕上げたいなっていうのはありました。自分では「100年くらい先のSF」な気分で作りまして。幅はかなり持たせてもらっていましたし、本当に自由にやらせてもらったので凄くありがたかったです。

水崎:森本さんは僕にとって師匠みたいな方で、今回のプロジェクトの中に森本晃司監督がいるというのが本当に嬉しくて。その仕事の取り組み方も理解しているつもりなんですけど、何かお願いしても絶対その通りにやらない人なんですよね(笑)。

で、このアルバム『SOUND & FURY』の中の(森本氏が担当したパートの)「Mercury in Retrograde」を聴いた時、この曲だけ少し変わった感じというか、あの瞬間だけふわっと変わるんですよね。だから、もうあの曲なら、世界観とは関係なく何が起こってもいいやって(笑)。だから、森本さんに担当して欲しい箇所は実は前から決めていたんです(笑)。

森本:はめられた(笑)。







─ヘルメットを被ったサムライ女性の設定について教えてください。

スタージル:我々はこういう屈強な男性キャラクターを映画の中で既に沢山見てきたし、せっかくなら違うものを作りたいと思ったんだ。そこで過去と未来を混合した、ガスマスクを身にまとった侍というのがイメージとしてあって、彼女は優れたウォリアーだけれども、大戦後だから空気を吸う為にはマスクを身につけなければならない。そして彼女は日本の伝統と甲冑を受け継いでいるんだ。これは俺の好きな映画『用心棒』や、大好きな俳優の三船敏郎からインスピレーションを間違いなく受けているね。戦争後の荒廃した未来にはもう沢山の弾丸とかは残ってなくて。だからこそ彼女は父親から受け継いだ刀で、悪党と戦うことが出来るんだ。

岡崎:僕も黒澤明映画とか三船敏郎さんは勿論大好きなので。こういう感じはスタージルはきっと好きだろうみたいなのは最初会って話した時に感じたので、それを意識しながらも自分のやりたい新たなデザインをどんどん詰め込んでいったんです。最初に出したラフ絵が一発でスタージルに気に入ってもらえたので、そこからはどんどん進めていくみたいな。とにかくスタートがものすごく良かったです。

─アルバム『Soudnd & Fury』の聞きどころをお願いします。

スタージル:アルバムをミックスして、そしてこのビデオをミックスして、多分楽曲を各300回は聞いたんじゃないかな。聴きすぎて若干燃え尽きているけど(笑)。「A Good Look」とかはライブでバンドの皆と一緒に演奏するのは、凄くいい感じになると思うよ! ありがとう!

─ビデオの見どころを一言ずつお願いします。

岡崎:僕は、アニメを実際動かす箇所にはそんなには関わってなかったんですけどで最終的に出来上がったものを見たときに、なんだこれ!ってって思ったんですよね。なんか知らないけどえらいもん見てるな。このかっこいい音楽と映像のリズムがあって、訳のわからない展開がどんどん進んでいくみたいな。そういうもうちょっとクレイジーな面白さみたいなところが僕は見どころかと思います。

森本:アニメーションでやってる表現で最近なかなかここまでは出来ないので(笑)。そういう意味での日本らしさは凄くふんだんにあるんじゃないかと思ってます。全ての映像はそのまま全てを語ってる訳じゃなくてそこに歌詞が乗っかってきたりだとか、見てくれる人たちの想像力を合わせてそれで完成するものなので。それぞれのいろんな意見が多分出てくると思います。それには正解がないので皆さんそれぞれ楽しんでもらえればと思います。

水崎:イメージの全体像は岡崎さんと一緒に考えたものがあるんですけど、それを半分のデザイン、半分の濃度で薄めて全編を描くよりも、僕らがやれる最大の魅力を密度濃く詰め込んで、全体のイメージがある中の半分だけを敢えて作った感じはあるんですよね。その半分を提示したら、果たしてご覧になる方はどのように反応されるのかな、と思います。そこから生まれる何か新しいものがあると信じて『Sound & Fury』のMVを制作しました。そういう目線で楽しんで頂けたらと思っております。




『SOUND & FURY』

スタージル・シンプソン
発売中
https://Japan.lnk.to/SS_SFRo

「スタージル・シンプソン: SOUND & FURY」
Netflixで独占配信中
https://www.netflix.com/jp/title/81171121

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