きっかけは『ニンジャバットマン』 アメリカン・ロック×日本のアニメ、異色コラボの裏側

左から落合隼亮、スタージル・シンプソン、水崎淳平、岡崎能士、森本晃司

2016年の前作『A Sailor’s Guide To Earth』でグラミー賞「最優秀カントリーアルバム」を受賞した遅咲きのシンガーソングライター、スタージル・シンプソン。彼にとって通算4枚目となる最新アルバム『SOUND & FURY』は、「カントリー/アメリカン・ロックとジャパニメーションの融合」という点でも話題を集めている。

『SOUND & FURY』の制作では、黒澤明監督の『用心棒』『七人の侍』『座頭市』をスタジオの壁に映し出しながら、彼のバンド・メイトとレコーディングが行われたという。リリースと同時にNetflixで配信された同名アニメーションは、スタージル本人が原案を手がけ、神風動画の代表・水崎淳平(『ニンジャバットマン』監督他)がディレクション、岡崎能士(『アフロサムライ』他)がキャラクター・デザインを担当。さらに、『アニマトリックス』などで知られるアニメーターの森本晃司など、多くのアニメーターたちがオムニバス形式で参加している。

絶望が支配する終末世界。報復を胸に誓った謎のドライバーは、憎き敵の姿を求め荒れ果てた大地を駆け抜ける--この異色コラボはどのように実現したのか。今年10月にNYで、スタージル、水崎、岡崎、森本の4人が集まり座談会が実現。アニメと音楽が融合したヴィジュアルアルバム『SOUND & FURY』の制作背景を語ってもらった。



─『SOUND & FURY』のビデオ・プロジェクトはいつから構想があったのでしょうか?  そしてそれを日本のクリエイターにどのような手段を用いてお願いするに至ったのでしょうか?


スタージル:元々のアイデアというのは、もう2017年の7月ぐらいにあったんだ。(同年の)6月にアルバムのレコーディングをしていて、7月にはフジロックに出演する為に自分のバンドとともに日本に行ってたんだよ。俺とShun(スタージルと旧知の友人であり、当Projectのコー・エグゼクティヴ・プロデューサー落合隼亮)とはもう10年ぐらいの付き合いになるんだけど、友達と過ごす為に俺はフェスティバルの2週間前にはもう日本に行っていて。まあ、結構な日にちを彼の家で過ごしてたんだけど(笑)。『進撃の巨人』とか『ニンジャバットマン』を観ていたときに、今作っているニュー・アルバムから1、2曲、日本のアニメーションでMVを作れたら最高なんだけどなあ、と思った。

そこから会話がスタートしたんだ。Takayasu(Takayasu Kuroda:エグゼクティヴ・プロデューサー黒田貴泰)とHiro(Hiroaki Takeuchi:プロダクション・エグゼクティヴ竹内宏彰)がネットワークを繋いでくれて。Jumpei(水崎)はとてもありがたいことにアルバム全曲に映像をつけたいと言ってくれて。これがこのプロジェクトのそもそもの始まりだったんだよ。

─グラミー賞受賞のアーティストがこんな作品を作りたいとの話が持ち込まれた時、クリエイターの皆さんはどのように感じました?

水崎:スタージルから、こういう作品が作りたいという構想があったんですけどそれがそもそも自由だったと言うか、選択の余地がすごくあって。アルバムから1曲でもいいし全部でもいいしという感じだったんです。スタージルのこれまでの音楽的キャリアとかグラミー受賞歴とか、そういう前提を抜きにして今度はこういうことをやりたいんだっていう彼の意志が凄くかっこよかったんです。あ、これはやらなきゃいけないやつだって(笑)。彼のこれまでのステップとか、イメージとかを全て飛び越えて、彼のサウンドが自分を説得させてしまったような、だから単純にその音に自分の映像を重ねたいっていう思いはありました。

岡崎:水崎さんが今おっしゃったように本当に自由にやらせてもらえたんで。しかも音源を聴いたら、これは結構とんがったことをやっても許してもらえるんじゃないかなと思って(笑)。本当に好きなように自分が思ったようにやらせてもらいましたね。結果、スタージルも(水崎)監督もOKと言ってくれたのでもう本当にすごく嬉しかったですね。

森本:自分もスタージルのこれまでのMVをWEBとかでじっくり見てみて。なんか凄く不思議な映像というか。そして自分的にも、あ、ここまでこういう表現がOKなんだというのがわかってきて。今回そういう意味では本当に自由にやらせてもらったので凄く楽しかったです。







─このビデオ・プロジェクトにおける世界の時代考証など教えてください。

水崎:基本的なストーリーのイメージはスタージルの頭の中にあったんです。これは第3次世界大戦の後のストーリーなんだと。我々クリエイター側がアニメーションとして起こしていく中で、骨格も若干アレンジしたんですけど。時系列でいうとまず2曲目の「Remember To Breathe」。舞台は京都で、お寺に刀鍛冶の二人と、そのマスターがいるんですけど。マスターの妻子がさらわれて、マスターが復讐に行くという。そのまま3曲目「Sing Along」につながっていくんですが、いつの間にかその復讐に向かった筈のお父さんが女の子に入れ替わっていて。では、その前に何があったんだろうっていうの見えてくるのが、6曲目の「Best Clockmaker On Mars」。世界大戦後の混乱の中で、支配者側とそれに立ち向かっていく人々との関係が、時間軸を前後させながら展開していくという構成になってます。

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