米政府機関の情報発信に革命起こした「グレート・ベイビー」

収蔵への熱意

CPSCのミームは「政府出版物―アメリカ合衆国」の項目に収蔵される。政府が配布したそれら出版物(大半は連邦政府によるものだが、中には州や地方自治体によるものもある)の中には、建国期にまでさかのぼるものもある。こうしてCPSCのミームは政府広報に新たな1ページをもたらした一方、歴史を掘り返すと先例も山ほどある。例えばグレート・ベイビーはスモーキー・ベア(訳注:1940年代に登場した、山火事啓発広告のキャラクター)と同じ流れを汲むものだし、政府はかつて若者にアピールするためにコミックブックも発行していた。それも議会図書館に収蔵されているとウォーカー氏が教えてくれた。

他の業務に加え、ガルボ氏はCPSCのミームコレクションを編纂し、議会図書館にまとめて送る作業に追われている。約30作品をまとめた最初のセットがちょうど完成したところで、これだけでも数カ月かかった。ガルボ氏は各作品のメタデータ――制作時期やアイデアが浮かんだ行程まで、可能な限り事細かく記録しておきたかったのだ。実際のところ、これらのミームは現在公式に議会図書館のオンライン蔵書カタログに掲載されているが、当面はタイトルと概要しか閲覧することができない。フルサイズの画像が全て登場するのは11月頃の予定だ。数が十分そろえば、議会図書館が専用の蔵書目録を作る可能性もある。



ガルボ氏が入念にメタデータを入力する中、彼の仕事に欠かせないものでありながら、記録に残すことができないものがひとつ――これまた例の第6節(b)の制限のせいだが――制作中に彼が聴いていた音楽だ。彼の選曲リストには数々のポップやラップが並んでいて――リゾ、ジェイ・Z、ケンドリック・ラマー、ケシャ、カーリー・レイ・ジェプセン、ロビン――本人曰く、彼がCPSCのTwitterページに盛り込もうとしたポジティヴな雰囲気が反映されているのだという。だが音楽は、より実用的な日常業務も果たしている。

「CPSCで働けることは特権です。ここで仕事して、人々の生活をほんの少しでも豊かにできることに日々感謝しています」とガルボ氏は言う。「でも大変ですよ。うちは小さな組織ですから、資源が限られているんです。他の機関なら2人でやる仕事も、基本的に僕1人でこなしています。本当に大変な日もありますよ。気を抜くと、働きすぎて疲労困憊してぼーっと座っている、なんてことになりかねない。人々の気分を高め、ほんの少し世界にポジティヴな空気を送り込んで、なおかつ啓蒙するようなグラフィックを製作する場合、そういう心持ちはよくありません。だから時に“コール・ミー・メイビー”にすがりたくなる。ロビンの曲に救われるときもあるんです」

Translated by Akiko Kato

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