DIR EN GREYライブレポ 「痛み」と向き合う覚悟と「生」の実感

DIR EN GREYのライブはどこか深い森に放り出された感じがある

2曲目もアルバム『The Insulated World』から「赫」。気が付けば、ライブ本編は6曲目に演奏された「Merciless Cult」以外は全てが『The Insulated World』からの曲だった。DIR EN GREYの代表曲とも言える「朔-saku-」「Revelation of Mankind」といった曲は演奏されなかった。

この選曲に関して薫はこんな風に教えてくれた。「今回は完全にアルバム『The Insulated World』の世界観ですよね。なので、他の曲は入れたくなかった。しかも、近い時期の曲は入れたくなかった。そっちの曲の世界が微妙に入ってきてしまうので。なので、アルバム以外の曲としては(発売時期が)遠い曲を入れました」と。確かに、「Merciless Cult」は、2005年に発売されたアルバム『Withering to death.』の収録曲だ。この曲を入れて『The Insulated World』の世界を完成せるかのようにメンバーは演奏を続けた。

先ほど、「DIR EN GREYのライブはどこか深い森に放り出された感じがある」と書いたが、この日のライブはさらに“雨が降る”深い森のような感じだった。

そもそもDIR EN GREYのライブは照明演出において、スポットライトは使われない。メンバーの顔が見えないとまでは行かないが、照明としては常に、暗い色目で明るくはない(もちろん、凝った照明だ)。そんな状況の中、激しい演奏と京の生々しいまでの歌と叫びが続くステージが“雨が降る”という感覚にさせた。

雨が降る深い森。あなたはきっと不安で、声を上げ、森の外に出るために、走り出すだろう。実際、DIR EN GREYのライブでは、京のシャウトに煽られるようにオーディエンスが叫ぶ。それはもちろん、メンバーへの声援でもあるのだろうが、何かを求め漏れ出て来る声に近いように感じる。

そして、そうした声を上げる時、人は生きていること実感するし、生きていたいんだとわかる。そういえば、DIR EN GREYのライブでは京が何度も「生きてんのか?」「生きてんだろ?」とオーディエンスを挑発する。これがライブ中のメンバーによる唯一のMCなのだが、これはオーディエンスが迷わず森の出口へ向かうための命綱なようなものなのかもしれないとさえ思えた。

先日のRolling Stone Japanでのインタビューで薫がアルバム『The Insulated World』について、「メロディアスな部分を極力排除した、激しいアルバム」と語っていた。そのアルバムからの激しい曲が続くライブの本編は、5曲目の「Rubbish Heap」、6曲目の「Merciless Cult」辺りで激しさのクライマックスを迎えたような気がした。


Photo by 尾形隆夫


Photo by 尾形隆夫


Photo by 尾形隆夫


Photo by 尾形隆夫


Photo by 尾形隆夫

Shinyaのドラムは激しくうねり、Toshiyaのベースも太いビートを刻み、Dieのギターはヘビーで、薫のギターもノイジーかつ前衛的で、京のデスヴォイスは凄まじく、演奏はテンションがマックスだったし、オーディエンスの感情も頂点に達したような感じだった。そして、感情が頂点に達したオーディエンスはその後、感情を崩壊させていくような感じで、言葉にならない叫びのような声を上げていた。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE