エリザベス・ウォーレンが「売春の非犯罪化」に慎重になる理由

ウォーレン議員の真意への疑惑

だが、声明はウォーレン陣営としては珍しいことではない。事実、彼女は6月ワシントンポスト紙のデイヴ・ワイゲル記者に対しても、一字一句ほぼ同じ内容を語っている。ただしその後に、人身売買の被害者の権利保護に賛同する文章が続いた(念のために言っておくと、セックスワーカーの権利を訴える活動家の多くは、反人身売買活動家や警察当局が同意の上での売春と性的人身売買を混同している、と主張している)。

もちろん、選挙活動中の候補者が同じフレーズを使い回ししたからといって、悪いでも何でもない。とはいえ、売春の非犯罪化に関するウォーレン議員の声明はやや曖昧だ。特にLGBTQの権利についてはかなり詳細な提言がなされていることをふまえると、セックスワーカーの権利活動家は彼女の真意に「懐疑的」になっている、とマックラケン博士は言う(議員の非犯罪化計画案についてローリングストーン誌が取材を依頼したが、ウォーレン陣営はコメントを拒否した)。

セックスワーカー関連の問題に対するウォーレン議員のこれまでの履歴をみても、同じことが言える。2017年、ウォーレン議員はマルコ・ルビオ上院議員とともに人身売買業者への銀行取引禁止法案を提出したが、セックスワーカーの権利を訴える活動家らは、この法案は銀行側にセックスワーカーを差別する実質的な口実を与えるものだと声をあげた。決議には至らなかったものの、この法案は今年初めにも再提出された。もし可決されていれば、セックスワーカーたちは「金融制度から完全に権利を奪われてしまっていただろう」と、Decrim NYの運営委員会のメンバー、ニナ・ルーオ氏は先のローリングストーン誌の取材で語った。

またウォーレン議員は(大統領選に出馬している他の有力候補もみな)SESTA/FOSTA法に支持票を投じた。2018年に物議をかもしたこの法律はオンライン上の性的人身売買撲滅を目指したものだが、セックスワーカーいわく、この法律によってネット広告を出して客を選別することができなくなり、そのため街で客を拾う羽目になり、一層暴力の危険にさらされる結果となった。SESTA/FOSTA法の撤廃に言及せず、非犯罪化支持でごまかそうとするのは、中身の伴わない行為だとマックラケン博士は言う。「彼女はSESTA/FOSTA法の影響を特に受けた人々の声に耳を傾けませんでした。あの法律がどんな影響をもたらすかも全く理解していませんでした」とマックラケン博士。「彼女は今、本当にセックスワーカーに耳を傾けているのでしょうか?」

Translated by Akiko Kato

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