追悼ジンジャー・ベイカー、ドラムの魔術師が残した名曲10選

5. ブラインド・フェイス「君の好きなように」(原題「Do What You Like」)1969年


クリーム解散後、ベイカーとクラプトンはブラインド・フェイスを結成する。バンドによる唯一のアルバムの最終曲であり、ベイカー作詞作曲を手がけた「君の好きなように」は、流れに身をまかせることでそれぞれの力を引き出すという彼らの哲学が現れている。ベイカーは60年代のブルーノートの作品を思わせるライドシンバルを基調にしたビートで曲を支えつつ、中盤ではヒプノティックなタムロールとスラッシュメタルの原型かのようないかつさを誇る、強烈にファンキーなドラムソロを披露している。「大きな会場でやる時は、彼は頼もしい存在だった」ブラインド・フェイスのシンガー兼キーボーディスト、スティーヴ・ウィンウッドは昨年そう語っている。「ヘヴィなロックを欲してるオーディエンスの期待に、ジンジャーは見事に応えてくれたからね」

6. ジンジャー・ベイカーズ・エア・フォース「Aiko Biaye」1970年


クリームとブラインド・フェイスでの活動を終えた後、ベイカーはエア・フォースを結成し、アフリカ音楽やエッジーなファンク、そして極彩色のサイケロックまで、その多様な音楽的バックグラウンドを形にしていった。「Aiko Biaye」は、彼のヴィジョンが垣間見えるアバンギャルドなパーティーミュージックだ。バンドで同じくドラムを担当したガーナ出身のRemi Kabakaと、オシビサのリーダーだったTeddy Oseiと共同で作曲した同曲は、ヒプノティックな12/8ビートや荒ぶるサックス、そして呪術的なチャントが印象的だ。ベイカーがバンドのシンガーの1人とデュエットする長尺のブレイク部では、彼の関心がロックよりもずっと深いところにあることを物語るトランスグルーヴを聴かせている。

7. フェラ・クティ・アンド・アフリカ70「レッツ・スタート」1970年


「彼ほどアフリカ音楽のビートを深く理解している西洋人はいない」アフロビートの生ける伝説トニー・アレンは、2009年に本誌のJay Bulgerにそう語っている。70年代初頭にベイカーがラゴスに建てたスタジオでライブ録音された同曲で、彼はアメリカ産ファンクよりもしなやかでシンコペーションを強調した、正真正銘のアフロビートを聴かせている。その礎となっているのは、過去に彼が幾度となく重ねてきたジャムセッションの経験だ。彼が生み出す「レッツ・スタート」のうねるようなグルーヴは、今でも少しも色褪せていない。

Translated by Masaaki Yoshida

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