モモコグミカンパニーの居残り人生教室「今泉監督と語ったBiSHの話と映画作りの話」

左から今泉力哉監督、BiSHのモモコグミカンパニー(Photo by Takuro Ueno)



楽しみながら面白いものができた方がいい

ー今泉監督は注目を集めることについてはどう思ってるんですか?

今泉:僕は広がることの怖さはもうないというか、そこに関してはどうでもいいですね。自分の作品が面白くないものになっていってるなぁとか、作りたくないものを作ってるなぁみたいなことが起きたら、たぶん監督を辞めるか時間を置いて戻ってくるとかはあるかもしれない。ただ、昔から作ってるものを変えずに大きい場所でやらせてもらってるので、その点は今のところ大丈夫ですね。個人差もあると思うんですけど、ディスとかボロクソに言われるのも全然平気で。なんでかっていうと、最初から自分を上に置いてないからだと思う。だから批判する人がいるのも当たり前だなと思うし、ムカつくことはありますけど、結局はその人の意見ですし自由じゃないですか。僕も他の人の作品に関して意見を言うこともあるし、むしろそういうのを言えない方がキツくないですか? みんな褒め合ってる方が気持ち悪いし、ただ面白かったですの感想よりも、具体的なダメ出しの方が気づくこともある。面白かったです!って一言の方が「薄っ」っていう場合もあるし、しかもそれが後乗りだったりすると、自分の意見で正直に言えばいいのにと思っちゃいますね。

ー映画や音楽って人と共有しやすいですいからね。

今泉:面白いものを作ります! 面白いものを届けます!っていう感じじゃなくて、お客さんが観て完成……って言うとカッコよすぎるかもしれないけど、今も自分は映画のことを分かってないんですよね。以前、若手監督のトークショーに呼ばれた時に「脚本を書いてる時点のイメージと完成形に差はありますか」みたいな話題になって、若い監督さんは作風が違うからというのもあるけど「頭で考えた通り作ってます」と話してて、だけど僕はそうなったことがないんです。自分の映画でも、完成したのを観て「これとこれが繋がって、ちょっとグッとくる映画になったな。そういうことだったのか」みたいに、最後までどうなるかわかってないんですよ。だから超つまらないものになる可能性もあるんですね。脚本読んでる時は全然そんなこと思わなかったけど、出来上がったのを観て「これって感動する映画だったんだ」みたいな。毎回そんな感じです。


Photo by Takuro Ueno

ーでもそっちの方が面白いですね。

今泉:そうそう。自分も楽しみたいっていうのはあります。あと、よく「めちゃくちゃ苦労して大変な思いをすれば、面白いものができる」みたいな言葉があるけど、自分は撮影現場も楽しみたいですし、楽しみながら面白いものができた方がいいじゃないですか。苦労したのにつまらないものができたら、本当に最悪なわけで。だから現場も楽しい方がいいなと。

ーその考え方、新鮮です。

今泉:さっきの芝居の話もそうですけど、「これが正しい」って言われてるものを疑いたくて、その感覚の延長線上にありますね。

ー私はBiSHの中だとダンスが苦手な方なんですけど、メンバーのアイナ・ジ・エンドがいつも振り付けをしてくれて、アイナは踊る人の立場になって振りを考えてくれるんです。私のために元々のダンスを簡単にして、振りをつけてくれる。だから私も「楽しみながらできる」んだと思います。

今泉:やるかどうかが頑張りじゃないと思うし、よりいいものにするために振り付けを簡単にするっていう話で、そのアレンジにも時間がかかるだろうし、頑張りの方向が違うだけですよね。お客さんがどういうものを見たいかってことが大事なわけで。

ー自分の身近な友達がすごく落ち込んでる時、頑張れとは言わずに「生きてるだけでラッキーなんだから、何もしなくていいんだよ」って声をかけれるんですけど、自分に向かってとなるとなかなか言えないんですよね。

今泉:友達はたくさんいるんですか?

ーたくさんってわけじゃないですけど、高校時代からの友達とは今も仲良しです。女の子で2人親友がいるんですけど、私が生きてるだけで肯定してくれるだろうなっていうのはその2人ですね。

今泉:自分は昔からの友達がいないっていうのもコンプレックスなんですよ。たまに地元に帰って一緒に飲んだりするような人はいるけど。小学生や中学生の時、休み時間になると、僕の席には誰も来ないみたいな。でも、ヤンキーとも学級委員長みたいな人とも全員と話せるタイプで。要領よくやれるけど、例えばクラスでアンケートを取ることになって、「このクラスで一番の友達の名前を書きなさい」っていったら、たぶん誰も僕の名前は書かないだろうなと思ったこともありました。でも大学に行ったらワケわからないヤツがいっぱいいて、その時に初めて特定の男友達、2〜3人くらいと仲良くなったという感じで。

ーそういう友達ができると世界が変わりますよね。私がずっと仲よくしてる友達って最初はその場にいるだけですごくムカつく女だったんですよ。でも今は親友で。

今泉:どういうムカつきなんですか?

ーそれがわからないんですよね。別に何が奇抜ってわけでもなくて、こいつとは絶対仲よくなれないなって。でもある時、音楽の授業中に先生の発言がツボにハマってしまって、皆がシーンとしてる時に声を出して笑ってしまったことがあって。そしたらその子も笑ってたんですよ。あとから2人で怒られたんですけど、そこからですね。私、嫌いだった人とすごく仲良くなることが多いです。

今泉:わかりますね。興味がない人は好きにも嫌いにもならないじゃないですか。簡単にひっくり返らないかもしれないけど、どこか気になってるってことは間違いないですからね。

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