映画『イエスタデイ』監督と脚本家が語る、今の時代に改めて伝えたいビートルズの音楽

1. いかにして彼らはあれだけのビートルズの曲の使用許可を得たのか?

映画業界では金が物を言う。カーティスは早い段階で、ビートルズの曲を劇中で使うことは可能だと聞かされていた。オリジナルの使用には莫大な金と手間がかかるが、カバーはそうでもないからだ。「許可が取れないとわかっていたら、脚本を完成させようとはしなかったかもね」カーティスはそう話している。「抱きしめたい」(原題「I Want to Hold Your Hand」)から「レット・イット・ビー」まで、劇中ではジャックがビートルズの曲15曲を歌っている。

ビートルズのパブリッシャーであるSony/ATVとのいざこざを避けるため、その義務があったわけではないが、カーティスは先方に本作の脚本を送ったという。「送られてくる脚本の大半は伝記映画か、あるいはドキュメンタリーのものです」Sony/ATV Music Publishingの代表兼Chief Marketing Officerとして、映画やテレビ番組におけるビートルズの曲の使用ライセンスを管理しているBrian Monacoはそう話す。「だからこういうユニークな企画は注目されやすいんです」。

Monacoとビートルズの会社であるApple Corpsは、同作のコンセプトと脚本に好意的な反応を示した。「アイディアを気に入ってもらえなかったら、15曲もの使用許可は得られなかっただろうね」カーティスはそう話す。「ビートルズの名声に傷をつけるようなものは認めないはずだからさ」実際Monacoは、劇中で任意の15曲もの使用を許可する(使用料は明らかにされていない)ケースは極めて稀だと話している。「契約書には各曲の使用回数の上限が明記されてた」ボイルはそう話す。「でも必要に応じて、使う曲を変更することも認めてくれてたよ」

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『イエスタデイ』撮影現場でのパテルとボイル 写真:Jonathan Prime/Universal Pictures

2. なぜ「セクシー・セディー」や「レイン」ではなく、「ヘルプ!」や「イエスタデイ」等の代表曲ばかりを選んだのか?

単純に映画のインパクトを強調するためだ。「選択肢はものすごく豊富だったし、誰もが知ってるはずの曲が認知されてないっていうシナリオだからね」カーティスはそう話す。「僕自身は『ジス・ボーイ』みたいなマイナーな曲も好きだけど、『イエスタデイ』や『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』みたいな超有名曲を誰も知らないっていう設定だからね。僕らは最初から青と赤の(コンピレーション)アルバムに入ってる曲、つまり人気ランキングの上位25曲に目をつけてた」ボイルはそう話す。「個人的には『夢の人』(原題「I’ve Just Seen a Face」)を使いたかったけど、知らない人も多いだろうからね」

3. 脚本の内容について、ビートルズのメンバーによる許可は必要だったのか?

答えはノーだが、作品のエンディングで流れる彼らのオリジナル音源の使用については、メンバーたちの同意を得ている。ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスンの代理人たちが使用に同意したことは幸運だった。マッカートニーは同作の試写会に足を運ぶことはできなかったが、スターは視聴後に製作陣を讃えるコメントを寄せている。
(※註:本稿公開現在では、先日ポールは「良い作品だった」とコメントを寄せている。

Translated by Masaaki Yoshida

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