カーリー・レイ・ジェプセン、ツアー初日・東京公演で見せた「ポップの極北」

カーリー・レイ・ジェプセン、2019年10月7日NHKホールにて(Photo by Alex Perkins)

通算3作目のニューアルバム『Dedicated』を携えて、2016年以来となるジャパン・ツアーで全国5都市を廻るカーリー・レイ・ジェプセン。ツアー初日の10月7日、NHKホールで開催された東京公演の独自レポートをお届けする。

※この記事はセットリストのネタバレを含みます。

全米シングルチャート9週連続1位を記録した「Call Me Maybe」の大ヒットから7年も経つが、ここ日本でもカーリーの人気はまったく衰えていない。今年6月のプロモーション来日でメディアを賑わせた彼女は、その一環で行われたスぺシャルライブで10月の全国ツアーをサプライズ発表。東京公演はそこから1カ月ほどで完売し、名古屋公演もソールドアウトするなど、その人気ぶりは今も健在だ。

2013年の初ジャパンツアー(東京公演は赤坂BLITZ)では、とにかくティーンの熱狂ぶりが印象的だった。今回も10〜20代の女性ファンが目立っていたが、ラジオやTVCMなどで楽曲が繰り返し使われたのもあり、客層はすっかり幅広くなったみたいだ。NHKホールに足を運んでみると、カーリーの音楽と青春を過ごしてきた世代から、“洋楽の入り口”として出会ったであろう中高生のキッズ、優れたエンターテインメントを求めるミドルエイジまで、いろんな人が集まり賑わっている。開演前からグッズ・コーナーには長蛇の列ができ、カーリーのサイン入りポスターが貼られた一角は記念撮影エリアとなっていた。

やがて定刻通り、19時ちょうどに客席が暗転。4人編成のバンドを従えて、カーリーが姿を現わすと黄色い大歓声が巻き起こった。ライブは『Dedicated』の収録曲「No Drug Like Me」でスタート。ブロンドのショートカットをなびかせつつ、カーリーは力強く歌ってみせる。その後は、2ndアルバム『E·MO·TION』(2015年)から2曲続けて披露。タイトル曲「E·MO·TION」ではカーリーがキュートな振り付けを見せ、「Run Away With Me」ではアーバンなサックスが吹き荒れるなか、カーリーと観客が(椅子席も気にせず)一斉にジャンプする。4曲目の「Julien」でミラーボールを吊るしていたように、80sディスコに影響を受けた『Dedicated』の流れを汲んで、ライブはとにかく終始ダンサブル。新たに導入されたスクリーンのVJ演出も、各楽曲と絶妙にシンクロすることで相乗効果をもたらしていた。


Photo by Alex Perkins

そして、まだ序盤にも関わらず、代名詞の「Call Me Maybe」をプレイ。カーリーが客席にマイクを向けると、会場中がシンガロングの嵐に。いまやスタンダードとなった感もある名曲だけに、その盛り上がりは凄まじいものがあった。さらに興奮冷めやらぬなか、『Dedicated』でも随一のポップチューン「Now That I Found You」を熱演。カーリーが得意とするノリノリの展開に、ムードはすでに最高潮だ。

その後は、愉快に弾けたりしっとり聴かせたりしながら、目まぐるしくステージが進行していった。テンポの良さは驚異的ですらあり、開演から40分が経過するよりも先に、10曲目の「Fever」までやり終えたくらいだ。それもそのはず、彼女はMCもそこそこに、間髪置かず曲をプレイしていく。歌いっぱなしなのに疲れたそぶりも見せず、水もまるで口にしていない。そのプロ根性とスピード感は、あのポール・マッカートニーのステージングとも近いものがある。

テイラー・スウィフトの『Reputation』ツアーを例に挙げるまでもなく、ここ数年のメインストリームでは競い合うように、凝りまくったステージ演出がトレンドとなっている。カーリーほどのポップスターであれば、もっと派手な演出に頼ってもおかしくはない。しかし、彼女はあくまで自分の歌とバンド演奏のみで勝負し続ける。この真っ直ぐでナチュラルな姿勢には、カーリーの音楽家としての矜持も窺える。もちろん、客席に投げキッスを見舞ったり、バンドメンバーとお揃いのステップを踏んでみせたりと、ライブならではの見せ場作りも抜かりない。「Too Much」ではMVを再現するように、カーリーと瓜二つの金髪ウィッグをメンバーが被って笑わせた。

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