スティングが日本で語るポリスからの40年、グレタ・トゥーンベリと福島への想い

スティング、2019年10月7日の福岡公演にて(Photo by 田中紀彦)



今は世界中が「空虚」に苦しめられている

─70年代半ばから活動を始め、40年近く第一線で活動し続けていますが、そのモチベーションはどこから来ているのでしょうか。

スティング:音楽を辞めるというのは、すなわち「死ぬこと」だと思っている。まだ死にたくないからやり続けているということだよ。それに、こうやって昔のヒット曲を演奏しながら、常に「新しいこと」を探し続けている自分にも気付くんだ。心の中に大きな穴がぽっかりと空いていて、それを埋めるものを常に探し求めている気がする。そして、その「空虚」があるからこそクリエイティビティが生まれてくるのかも知れないな。

それとね、楽曲というのは「花」のようなものだと僕は思っているんだ。花って毎日水をあげないと綺麗に咲かないし枯れてしまうだろう? つまり僕は、曲という花に水をあげ続けているガーデナーだ。しかも、とびきり優秀なね(笑)。

─とても素敵な喩えです。では、音楽以外で興味があるのは?

スティング:やっぱり政治問題だね。特にUKのブレグジットとUSのトランプ問題は常に関心を持っている。というか恐怖すら感じるね、「なんということが起きているんだ」って。当たり前のことだけど、インターネットに溢れている情報も全て正しいとは限らない。実際、政治的に操作されたこともあるし、気をつけないといつ自分が騙されるかわからない状況だ。

紙媒体が主流だった頃は、幅広い情報を取り扱いつつもちゃんとメディアごとに芯が一本通っていたし、ちゃんとそこから文化が生まれていたと思う。でもインターネットが登場し、玉石混交で「真実」が埋もれてしまった今は「リテラシー」というものが非常に重要になっている。しかも今は、ジャーナリストの命が危険に晒されているんだ。彼らが真実を語り、その結果命を奪われるという事件が実際に起きているからね。良心的なジャーナリストやジャーナリズムを守るため、我々に出来ることはないかを最近は考えているよ。



─香港で起きている、大規模なデモ運動についてはどう思っていますか?

スティング:香港はずっと身近に感じている国だ。日本に来ると、必ずと言っていいほど香港でもライブをしてきたからね。同時に「後ろめたさ」も感じている。かつて香港はイギリス領で、1997年に中国へと返還された。そうやって振り回されてきた彼らの歴史に、僕らは深く関わってきたからね。今、香港の人たちが自由を求めているのは当然のこと。なのに中国政府がコントロールしようとしている。これ以上、暴力が行使されないことを本当に願っているよ。

さっき僕は、自分の中の「空虚」について話したけど、今は世界中が「空虚」に苦しめられているんじゃないかな。政治的にも社会的にも文化的にも「物足りなさ」を感じていて、それを埋めようともがき苦しんでいるとしか思えない。その穴を埋める強力なリーダーが現れてほしいという気持ちが、みんなの中にある気がする。

─とても興味深い意見です。

スティング:カルチャーと世界は、常に影響し合っている。カルチャーは世界を映す鏡であり、その逆もまた然りだ。僕としては音楽でその「空虚」を埋めたいと思っているし、そのことで世界が少しでも良くなっていくことに貢献できたら嬉しいよ。

Translated by Kana Muramatsu

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