白人の元警察官が黒人男性を誤って殺害、これまでの通例を覆した判決に

アメリカの根深い人種差別問題

それでもなお、ガイガー被告の事件は、まるでいたずら好きなある種の人種差別者が、黒人の我慢の限界を試すために仕掛けたかのようだ。白人警官が、同じアパートに住む黒人の部屋に入っていく。本人が言うには、強盗だと勘違いして射殺した――法廷では、テキサス州の「城の原則」)(訳注:不法侵入者を銃などで撃退する自衛権を認める原則)による自衛権を主張した。被告側の弁護士の頼みの綱は、こうした裁判でありがちな、被害者の名誉を貶める戦略。最終弁論でも、ジーンさんの体内からマリファナが検出されたことが、まるで今回の件と関係があるかのように主張した。だが今回のジーンさんはもちろん、ラクアン・マクドナルド裁判やウォルター・スコット裁判の件でさんざん見てきたように、結局黒人は、明らかに罰を免れることのできない状況であっても、警官に殺されてしまうのだ。

ガイガー被告の弁護は誰が聞いても侮辱的だった。そしてその後我々は、被告に人種差別的な携帯メールを送る傾向があったことを知る。自分も高層アパートに住む人間として言わせてもらえば、住人の誰かが部屋を間違えるのはもちろんのこと、ひとつ上のフロアに間違えて入室するというのは――たとえ9月のあの日ガイガー被告がそうだったように、1日13時間以上の勤務明けだったとしても――あり得ないことだ。世にも奇妙な話ではあるが、白人の警官が武装していない黒人男性を殺した以上、なんとか彼女の言い分に信憑性を持たせようとした意図が見て取れる。彼女はベテラン警官で、警察官組合の組合長からもお墨付きを受けていた。事件が起きたその晩、会話を聞かれるかもしれないからと、パトカーに搭載されたドライブレコーダーのスイッチを切るように命じたような人物からのお墨付きだが。アメリカの法体系には問題はなかった。彼女は無罪放免になるだろうと私も予想していた。

Translated by Akiko Kato

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