宇野維正が解説、『ゲーム・オブ・スローンズ』を新たな次元へと押し上げたミゲル・サポチニクという才能

『ゲーム・オブ・スローンズ』(提供:BS10スターチャンネル © 2019 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBOR and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.)

『ゲーム・オブ・スローンズ』の魅力の一つは、いわゆる一般的なTVシリーズとは一線を画したショットのカタルシスにある。

その立役者となったのが、シーズン5から参加したミゲル・サポチニク監督だ。この2010年代を代表するグローバルなメガ・コンテンツを、「ショットの魅力」という観点から、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正が解説する。

アメリカの映画ブログ・サイトFilm School Rejectsが運用している、One Perfect ShotというTwitterの人気アカウントがある。映画の劇中の文字通り「一つの完璧なショット」の写真を、撮影監督と監督のクレジットと共にポストするだけのシンプルなアカウント。かつてその対象は映画だけだったが、時代の変化に応じて、近年はかなりの割合でTVシリーズの「完璧なショット」もピックアップされている。

今、そのアカウントで最も頻繁に取り上げられているのが『ゲーム・オブ・スローンズ』だ。シーズン6エピソード9「落とし子の戦い」で兵士の死体の山から顔を出すジョン・スノウ。シーズン7エピソード4「戦利品」でラニスター&ターリーの連合軍を焼き尽くすドラゴン。ここぞというタイミングで一気に大放出されるスペクタクル性と、そこでのキメの画(ショット)がもたらすカタルシスは、『ゲーム・オブ・スローンズ』の大きな醍醐味の一つだ。

もっとも、『ゲーム・オブ・スローンズ』においてそんな「完璧なショット」が頻出するようになったのは、シーズンをいくつか重ねてからだった。特に物語の導入部分においてはスタティックな画面構成の会話劇が主軸だったが、最初の呼び水となったのはシーズン2エピソード9「ブラックウォーターの戦い」だ。お約束の舞台転換は一切なし、エピソードの全尺をつかってブラックウォーター湾でのスタニス・バラシオンの艦隊とラニスター軍の戦闘を描いたこのエピソードで、製作陣は映画『センチュリオン』で歴史劇の戦闘シーン演出経験のあるニール・マーシャルをシリーズに引き入れた。

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