宇野維正が解説、『ゲーム・オブ・スローンズ』を新たな次元へと押し上げたミゲル・サポチニクという才能

「映画のような作品」から「映画でも観たことがないような作品」へと飛躍させた最重要パーソン

マーシャルはその後、同じくほぼ全編が戦闘シーンのシーズン4エピソード9「黒の城の死闘」でも貢献することになるが、『ゲーム・オブ・スローンズ』をスペクタクル劇として「映画のような作品」から「映画でも観たことがないような作品」へと飛躍させた最重要パーソンは、シーズン5から参加したミゲル・サポチニクだ。

初演出となったシーズン5エピソード7「贈り物」でのウォームアップを経て、続くエピソード8「堅牢な家」でのホワイトウォーカー率いる亡者の群れとの壮絶な戦闘シーンとその顛末の衝撃は、(シリーズの人気にともなう制作費の拡大という背景も見逃せないものの)『ゲーム・オブ・スローンズ』がエンターテインメント作品として新たな次元に突入したことを強く印象づけた。

サポチニクが演出したシーズン6エピソード9「落とし子の戦い」は、その年のエミー賞監督賞をはじめとして、単独エピソードとしては『ゲーム・オブ・スローンズ』史上最多の賞に輝くことに。画面が暗すぎると世界中で大騒ぎになったホワイトウォーカーとの最終決戦回、シーズン8エピソード3「長き夜」も彼の仕業。最終的にサポチニクが演出面においていかに強い主導権を握るようになっていたかがわかる、全シーズンを通して最もエクストリームなエピソードだった。



Edited by The Sign Magazine

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