「ジョーカー」誕生から新作まで、全ヒストリー完全ガイド

悪趣味な道化と陽気ないたずら者の二面性

ジョーカーは当初、相手を怖がらせるような笑い顔を浮かべた冷酷な狂人として描かれ、バットマンが打ち負かすまで2つの凶悪犯罪を重ねていた。ジョーカーによる最初の殺人事件では、かけると被害者の顔に気味の悪い笑い顔を残す「ヴェノム(毒)」が使われている。

ところが1942年、ジョーカーの殺人は止まる。以降ジョーカーは、バットマンの人気の高い敵役として頻繁に登場することとなる。それからのジョーカーの犯罪は、ほとんど無害な巧みでコミカルな詐欺や盗みへと変化した。例えば『Batman』44号(1946年)では、カジノで大勝ちしたことにヒントを得たジョーカーが巨大なスロットマシンを作り、大きなコインでバットマンとロビンを襲撃する。攻撃に失敗したジョーカーは、今度は巨大サイコロで2人を襲うのだった。このようなジョーカーによる華々しいアクションシーンは、1954年にコミックス倫理規定委員会が設立されて以降、ますます顕著になった。

キャラクターの過渡期にビル・フィンガーは、その後何度も引き合いに出されることとなるオリジン・ストーリーを作り出した。1951年に出版された『Detective Comics』168号に、ジョーカーの前身とされるキャラクターが初登場する。仮面をかぶった犯罪者レッド・フードが、バットマンに追い詰められて化学薬品の樽に落ちるというストーリーだ。その後、大樽の中から脱出したヴィランの髪は緑色になり、さらに肌は死体のように白く、常に恐ろしい笑顔を浮かべる姿に変身していた。アラン・ムーアとブライアン・ボランドは、このエピソードをクラウン・プリンスの誕生と位置付け、大きな反響を受けたグラフィックノベル『The Killing Joke』(1988年)に引用したのだろう。

ドタバタTVスター

ポップカルチャーのスーパースターダムの台頭により、ジョーカーの存在はほとんど忘れ去られていた。それでも仰々しいクラウン・プリンス・オブ・クライムは、ウィリアム・ドージャーとロレンツォ・センプル・Jrがバットマンをポップアート化したTVシリーズ『バットマン』(1966年)にぴったりマッチした。ヴィランとして頻繁に登場するジョーカーはベテラン俳優のシーザー・ロメロが演じた。彼はトレードマークである口ひげを剃ることを拒絶したため、ひげの上にドーランを塗って対応したというエピソードも残されている。


1960年代のTVシリーズ『バットマン』でジョーカーを演じたシーザー・ロメロ

活気ある1960年代に作られたTVシリーズ『バットマン』は、長年に渡りファンの間で人気を二分してきた。作品のコメディタッチを非難するファンもいれば、活気あるアイディアやコミカルな演技を称賛する声もある。ロメロ演じるジョーカーは恐ろしい悪役からは程遠く、今の私たちが見慣れたキャラクターをややサイコっぽくした感じだった。しかし彼の華麗な演技は間違いなく、その後ダークナイトの天敵を演じた者たちに影響を与えているはずだ。

Translated by Smokva Tokyo

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