ビートルズファンは映画『イエスタデイ』を信じられるか?

『イエスタデイ』に出演するヒメーシュ・パテルJonathan Prime/Universal Pictures

遂に日本公開が開始した映画『イエスタデイ』。『トレインスポッティング』や『スラムドッグ$ミリオネア』の監督、ダニー・ボイルが贈る新作だ。ファブ・フォー不在の世界というファンタジー映画が伝える「ザ・ビートルズ」の偉大さとは?

【注:文中にネタバレを想起させる箇所が登場します】

映画『イエスタデイ』は、実存する疑問に溢れている。もし、ザ・ビートルズがこの世界にいなかったとしたら?もし、彼らの曲を誰も知らなかったら?

「エイト・デイズ・ア・ウィーク」無しに、人々は恋に落ちるのだろうか?「フォー・ノー・ワン」や「悲しみはぶっとばせ」、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」を聴かずして、人々は反省するのだろうか?もし私たちが彼らの曲を、今、この瞬間に初めて聴いたとしたら?そして一番大事なことは:もし、可愛げのない、ギターばかり弾いているひねくれた男が、ある日、100曲以上の名曲と共に現れたら?

この映画は実存する疑問を、ファブ・フォーをテーマにしたロマンティックコメディに落とし込んだ物語である。脚本は、このジャンルのベテランであり、「ザ・ビートルズが僕の人生で一番大事なんだ」と声高らかに語る、リチャード・カーティスによるものだ。彼は作品を、全然タイプではなかった男性が、次第に魅力的に見えて来るようなラブストーリーのど真ん中風に仕立てあげた。プロットのベースは、「俺はただの『セクシー・セディ』で、『ヘイ・ジュード』の前に立ち、彼に『アンド・アイ・ラヴ・ハー』と頼み込む」という内容だ。

「これはミュージカルじゃないんだ。ザ・ビートルズの楽曲をカバーするだけじゃなくて、捨てられた記憶を思い起こして、再び世界に届けているんだよ」と、監督のダニー・ボイルはローリングストーン誌のデヴィッド・ブラウンに語ってくれた。想像してみよう。2019年の大人が、「捨てられた思い出」からザ・ビートルズを救うことが、自分の使命であると考えることを。しかし、これが『イエスタデイ』の根本的なアイディアなのだ。

あまり知られていなかったザ・ビートルズを救うことは、ハリウッドが控えめながら長く続ける伝統である。その部分を誇張したのは70年代のとある映画だ:ビー・ジーズは『サージャント・ペッパー』の映画版を製作し、バンドのメンバーは自らを演じ、ピーター・フランプトンがビリー・シアーズを演じた。「最近のキッズはザ・ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を知らないんだよ」と、1977年にロビン・ギブは語っていた。「いいかい、ザ・ビートルズのような存在は他にないんだ。もし彼らがいなければ、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』がライヴで演奏されることもない。俺たちの曲だって、彼らの曲に上書きしてしまうことになる」

Translated by Leyna Shibuya

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