現代R&Bシーンの旗手、ミゲルが初来日で見せた「甘美な夢」

今回、日本での公演が東京一カ所のみだったこともあって、ミゲルが「遠くから来た人はいる?」と問いかけると多くの手が上がった。また、ラグビーワールドカップ中ということもあってか、海外から来たオーディエンスも多数。大阪、マニラ、サモアと、会場から上がる返答の一つひとつに丁寧にリアクションして、親密なコミュニケーションを取るミゲルの姿が印象的だった。

その後、ミゲルは自分の出自=LA出身で、祖母はメキシコからの移民だったこと、その祖母が昨年亡くなったこと、祖母がミュージシャンになる道を後押ししてくれたことなどを話し、「俺たちは何でもなりたいものになれるんだ」と語りかけた。その真摯な姿を受けて、会場の熱気は一段とヒートアップ。「Adorn」「Waves」と続いた演奏中を通して、大合唱と黄色い歓声が鳴り止まなかった。


Photo by Naoki Yamashita

ライブが終盤に入ると、ミゲルがドラマーと少しの間話し込み、「本当はやらない予定だった曲をやるよ」と話して「Quickie」へ。「本当に若かった頃に作った曲なんだ」と語った同曲は1st『I Want You』収録曲で、オールドスクールなブレイクビーツが新鮮に響いた。

失恋の経験をもとに書いたという「Sure Thing」から、4月に発表されたスペイン語バージョンのEP「Te Lo Dije」収録の「Caramelo Duro」を経て、ライブは大団円へ。ラストの「Skywalker」ではスクリーンに青空へと伸びる階段が映し出され、オーディエンスは天にも昇る恍惚とした表情でステージ上のカリスマを見つめていた。

アンコールにはほぼエレキギターの弾き語りで美麗な歌声を聴かせて帰っていったミゲル。オーディエンスの溢れんばかりの熱気も手伝って、終演後の会場には甘美な夢を見た後のような、気怠くも充足したムードが漂っていた。

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