JAZZY SPORTのMARTERが体現、音楽を旅のように楽しむ秘訣

ー『By The Ocean』の制作コンセプトを教えてください。

日常のなかで作ってきた曲のコンピレーションという感じ。

ー前作の『This Journey』もそんな感じだったんですか?

そうです。ただ、前作は慣れないアコギで曲を作りだしたから、周りからは「大丈夫?」って思われていたのかも(笑)。でも、やっぱり有機野菜っておいしいじゃないですか。そこを信じてやってみようと。それでギターをよく触るようになって、その延長線上で今回のアルバムも作りました。

ーとはいえ、前作から2年のスパンも空いてるわけで、新しい試みにも実践できたのでは?

ちょっとアップテンポな曲は増えたかな。ライブをやり続けると「こういう曲がほしいな」というのが出てくるので、そこから足していったりして。1曲目の「新しい世界」はギターでリズムを奏でたサーフ系の曲ですけど、こういうのは今までやってこなかったし、日本語の歌詞も含めておもしろい出来になったと思います。



ー演奏陣もいいですよね。上述のコスガツヨシさんや今村慎太郎さん(Dr)もそうだし、個人的には吉村勇作さんのオルガンが印象的でした。

あれはボストンの友人が所有しているスタジオで、彼が本物のオルガンを弾いたものをファイルで送ってくれました。プロデューサー的な能力もあるし、鍵盤で楽曲をグッと締めてくれるので、彼に頼めば間違いない。サビにオルガンのほしい曲が結構あって、たくさん活躍してもらいました。同じく鍵盤を弾いているラスマス・フェイバーは、彼の最新作(『Two Left Feet』)に参加したので、僕のアルバムにも参加してもらおうと思って。

ーここ2作のアコースティックな作風において、指標になったミュージシャンはいたりしますか?

ジャック・ジョンソンにはやっぱり影響を受けていると思うし、ベン・ハーパーも元から好き。ジョン・メイヤーはこないだ武道館でぶっ飛ばされましたね。もっと最近の人だとボン・イヴェールとか、マイケル・キワヌーカもいいですね。昔はクールで新しいものを追ってたりしたんですけど、最近は遮断とまではいかないけど、関係ないところで生きていて。ただ自分流に発信しているつもりです。

ーそういう自然体なスタンスが、いい形で作品に反映されてますよね。

流行ってるからトラップビートを入れてみようとか、そういうのは絶対しないです(笑)。

ー『By The Ocean』はオーセンティックな歌心とともに、海や青空を感じさせるアルバムだと思います。この作品と近いフィーリングをもつ曲を、MARTERさんが3つ選ぶとしたら?

ニック・ハキムの「Cold」、マック・アイレスの「Easy」、ブルーノ・メジャーの「Easily」かな。この3曲はどれも落ち着いていて癒されますね。ブルーアイドソウル寄りだけど、ビートの感じはJ・ディラ的というか。ダウンテンポの流れがここ数年ありますが、僕もこういう感じをやるのがいいのかなと思っています。





ーこうしてアルバムが完成したわけですけど、すでに新しい曲も作り始めているんですか?

それもそうだし、まだ出せてない曲が4〜5曲はあるんですよ。ライブだけで披露してる曲もあって、「あの曲は入れないんですか?」と聞かれることもあります。最近はアコギの弾き語りをすることが多いんですが、ひとりでもライブをできるようになったのは気軽でいいですね。ベースだとそうはいかないじゃないですか。バンドでしか活動できないとなると、ケンカをしたときに面倒くさいし。同じ車に乗るのもイライラする、みたいな(笑)。

ー弾き語りの醍醐味は?

さっきも話したように、昔は打ち込みを流して歌ってましたけど、(ライブなのに)同じトラックをかけてるのも進歩がないなって思ったんですよ。僕はジャムバンド出身だから即興が好きだし、その場のノリに合ったグルーヴを奏でるほうが、お客さんだって楽しいと思う。ひとりでライブするのでも、生演奏だったら毎回違ってきますしね。

ー弾き語りするようになって、ブッキングの感じも変わりました?

いや、以前からこういうスタイルですね。PAの機材も持ってるので、どんな場所でもライブできるんですよ。自分ひとりならスケジュール管理も融通が利きますし。「ここの空いてる日は釣りしようかな」みたいなこともできる(笑)。

ーそういう身軽さは、今の世の中とも合ってる気がします。

毎回違う発見があって楽しいです、すっかり旅気分ですよ。このあいだ四国に行ったときも、「釣りやりたいんです」って地元の人に案内してもらったら、ちっちゃい魚がガンガン釣れたんです。そしたら、その方の知り合いが料亭をやってると。そこで魚を捌いてもらって、唐揚げにしてもらったら超おいしかった。高知の室戸岬ってところですけど、バビロンから離れると熱い人が多いですね(笑)。人柄もあったかいし、親切にもてなしてくれる。




MARTER

『By The Ocean』
RZCD-86352   ¥2,500(税抜)
発売中


MARTER「By The Ocean Relece Tour」in TOKYO
日付:2019年10月25日(金)
時間:開場19:30 / 開演20:00
会場:渋谷7th Floor 〒150-0044 渋谷区円山町2-3 O-WESTビル7F
料金・席種:前売り(全席自由席) 3,000円(税込み) 1drink別
      当日券(全席自由席) 3,500円(税込み) 1drink別

※フル・バンドでのライヴになります。

チケット:
https://eplus.jp/sf/search?block=true&keyword=marter


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