サミットにて国連が気候変動の現状を発表、事態は深刻

ロス・グラシアレス国立公園内にあるアルヘンティーノ湖へ崩れ落ちる南パタゴニア氷原のペリト・モレノ氷河(2019年4月5日) David Silverman/Getty Images

先日NYで開催された国連気候行動サミットにおいて、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気候変動の危機をより深刻に受け止めるよう各国首脳に一層の注意を喚起した。今後、温室効果ガスの排出量を抑制する対策が取られなければ、海洋と雪氷圏の温暖化が人類に与える影響は莫大だと訴えた。

2019年9月下旬、ニューヨークで開催された国連気候行動サミットに、環境活動家や各国首脳が集結した。しかし同時期に最も注目されたのは、地球温暖化により世界中の海洋が“前代未聞の”影響を受けるだろう、とする国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がモナコで発表した特別報告だった。良くない状況だ。36ヶ国から100人以上の専門家が参加し、7000近い認定された情報源を引用元とした同報告は、特に温室効果ガスの排出量を抑制する対策が取られなければ、海洋と雪氷圏の温暖化が人類に与える影響は悲観的だという見通しを示している。

海洋は、排出された二酸化炭素の25%近くを吸収することで、気候変動による影響を抑制する重要な役割を担ってきた。IPCCの報告では、気温が上昇し続けて海洋に熱が籠もることで、海の酸性度が高まると共に酸素量が減り、生産性が落ち、生命にとって好ましくない状態に陥るだろうと警告した。また、熱帯性低気圧やハリケーンの発生頻度や強度も高まる可能性があるとしている。さらに、これ以上気温が上昇すると、これまでは100年に1度の頻度で発生していた海洋における激しい自然現象が、21世紀半ばまでに地域によっては年に1度のペースで発生するようになるとも指摘している。

地球上にある凍った地域、つまり雪氷圏の行末は、世界の海洋の運命に直結する。雪氷圏には約15億人が生活している。雪氷圏の一部(例えば氷河)が溶解すると世界規模で海面が上昇し続け、沿岸部が居住不可能な状態にまではならないにしろ、住民の生活に大きな影響を及ぼすだろう。前世紀と比較して海面は2倍の速度で上昇しており、上昇率も高まっている。IPCCの報告によれば、今世紀末の2100年までの南極地方を覆う氷床の溶解量はこれまでの予想以上に多く、海面上昇の大きな原因になるという。温室効果ガスの排出量を大幅に抑制できたとしても今後80年間で海面は最高60cm上昇し、仮に何の対策も打たなければ110cm上昇すると試算されている。

Translated by Smokva Tokyo

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