the pillows 山中さわおが語るバンド30年の歩み「抜け出した方が人生はすごく居心地がいい」

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結成30周年を迎えたthe pillows。30周年記念映画『王様になれ』、そして10月17日の横浜アリーナ公演の話を核にthe pillows・山中さわおにバンド30年の歩みについて聞いた。

―さわおさん原作のthe pillows結成30周年を記念映画『王様になれ』が公開になりましたが、もともと映画用に原案を書いたのですか?

そうですね。バンドのアニバーサリーが近づいてくると必ずマネージャーから『アニバーサリーどうしますか?何かしませんか?』という提案があるんです。で、アニバーサリーなので普段やらない企画を考えるんです。ただ僕らは15周年、20周年、25周年とアニバーサリーでいろんな企画をやってきてしまったので、やってない企画がほとんど残ってないんですよね。例えば15周年ではドキュメンタリーも作ってますし。で、30周年。できれば今まで自分がやってないことにチャレンジしたい。更に周りのロックバンドがやってないことをやりたい、という観点から考えて考えて、the pillowsファンの男の子が主人公というオリジナルストーリーの映画を作ろうということを思いつきました。それが2017年の冬ですね。

―映画はお金も時間も相当かかる大変なメディアですよね。

僕が「オリジナルストーリーの映画を作る」って言った時、マネージャーの顔が曇りましたからね(笑)。あと映画作りは未知の世界なんで、第一歩をどうしていいかわかんない。けど、今回監督していただいたオクイシュージさんが監督を引き受けてくれたら成立すると思ってました。

―でも、オクイシューさんも本作が初監督ですよね?

ええ。とはいえ、俳優・オクイシュージさんとは20年くらい仲良くさせてもらっていて。舞台の演出などはもうお手の物というかプロフェッショナルな方なんです。で、三軒茶屋の居酒屋に来ていただいて、この内容と思いのたけをぶつけたんですよ。でも最初はオクイさん「舞台と映画は作り方が違うから」と、しかも粗方のストーリーと登場人物が決まってるという。白紙の状態じゃないから難しいんですよ。「初監督作品としは結構難しいな」って難色を示したんです。それで、2〜3日して「どうですかね?」と連絡したところ「腹くくった。やろう!」とお返事いただいて、ああ、これでなんとかなると思いました。オクイさんに断られていたらもうこの企画自体諦めていましたね。完全にオクイさん一択の企画でした。



―映画のストーリーについて、ネタバレしない程度に話を聞きたいのですが……。あらすじで言えば、うだつのあがらないカメラマンの主人公・祐介(岡山天音)が、ユカリ(後東ようこ)という女性と出会いthe pillowsを知り、それによって自分の本当にやりたいことに気づいていく…というストーリー。主人公・祐介はさわおさんの分身ですか?

そうですね。まだなりたい自分になれない、なりたい自分になりかけてもいない、そういう若い時の自分を重ねて書きました。物語に出てくることはほとんど僕の経験です。

―主人公・祐介を写真家という設定にしたのは何か意味があるんですか?

それも僕の経験値なんですけど、無名の人間が、仕事内容がよくて「じゃあ君と今度から仕事しよう」ってなったのはカメラマンとデザイナーの2つだったんですね。でもデザイナーだとちょっと仕事シーンがインドアなので映画にした時にダイレクトに僕と絡むのは難しいので、消去法でカメラマンしかないと。カメラマンであれば映画の中で僕らthe pillowsとも絡めますし、実際そういうことがあったので。

―実際にあったんですね。

今は有名になってしまった橋本塁くんはもともと10代の頃からthe pillowsファンクラブに入ってた男の子だったんです。ある時、その頃は有名ではないけどもうプロにはなっていたくらいの時で、真心ブラザーズとか撮っていた流れでウチのドラムのシンイチロウが塁くんと知り合いになったんですよ。で「the pillowsのことがすごく好きなんで撮らせてもらえませんか?」って言ってきて。もちろんギャラもいりませんしフィルムも全部差し上げますと言われて、断る理由もないなってことで撮らせたところ、すごく良くて。で、「橋本塁君って人いいね」ってスタッフの間でも評判になって、「次の写真でもお願いしてみよっか」ってなったんです。要は本当にあったことしか思いつかないので、僕は(笑)。物語を考える能力がないんです。でも50年生きているとひとつくらいは物語が書けるのかなって(笑)。ただ、僕の原案にはオチもなかったので、映画が退屈にならないような仕組みはオクイさんが作ってくれました。

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