子どもの声は大人には届かない? 世界を動かした子どもたちの力

2019年9月13日、ホワイトハウスの前で発言するグレタ・トゥーンベリさん Sarah Silbiger/Getty Images)

先日、サミットでのスピーチで一躍世界から注目された児童活動家のグレタ・トゥーンベリさん。かつての歴史を振り返ると、市民権から労働闘争まで、子どもたちはつねに最前線に立ってきた。気候変動に対する戦いでも、成功のカギを握ったのは若年層の声だ。

2019年2月、小学生たちがカリフォルニア州上院議会のダイアン・ファインスタイン議員から叱責を受ける動画が世界中に拡散した。この動画は環境活動団体Sunrise Movementが投稿したもので、子どもたちは民主党上院議員に対し、グリーン・ニューディール支持撤回を再検討するよう要求していた。やがて動画には、堪忍袋の緒が切れたファインスタイン議員がキレる様子が映し出される。「私はもう四半世紀以上も上院議員をやっているんですよ。だから、どの法案が可決するかはよく分かっています」と、議員は声を荒げた。

ソーシャルメディアでは、動画に対する反応は真っ二つに分かれた。かたや大多数の人々が、このような厳しい口調で子どもたちを怖がらせ、将来に対する子どもたちの懸念を一蹴したファインスタイン議員の態度を批判した。その一方で子どもたちの教師や親に対し、冷酷にも子どもを利用して、自分たちの政治的目的を押し付けていると非難する人々も大勢いた。動画が拡散した当時、筆者の見解も後者寄りだった。幼い子どもたちの集団が、自分たちもろくすっぽ知らない問題について代議士に説教をたれるをの見ると落ち着かない気持ちになったし、自分も親として、自分たちの子どもがこんな風に利用されるのはどうかと疑問に思った。

私は間違っていた。今ならはっきりわかる。このことに気づかせてくれたのはグレタ・トゥーンベリさんだった。昨日国連総会で熱のこもった演説を行った後、保守派から怒りを買ったスウェーデンの16歳の環境活動家だ。「人々は苦しんでいます。死に瀕しています。環境系全体が崩壊しています」と彼女。「私たちは大量絶滅の危機を目前に控えています。なのに、皆さんが口にするのはお金のことばかり。永遠に続く経済成長という夢物語のことばかり」 演説のなかでトゥーンベリさんは、口調こそ柔らかかったものの、きっぱりと、雄弁でありながら、感極まる様子だった。彼女の演説はほぼ全てのメディアに取り上げられ、キャンディス・オーウェンス氏やタッカー・カールソン氏、そして大統領といった保守派の怪物らの格好の餌食となった。こうした“見識者”らは、16歳の少女の芝居がかったトーンや、彼女の風貌、さらには神経病上の差異に至るまで、重箱の隅をつついて彼女を攻撃した(トゥーンベリさんは自閉症スペクトラムで、本人も、アスペルガー症候群の診断は活動家としての“超人的な力”だ、と述べている。コメンテーターのマイケル・ノウルズ氏が彼女を「精神的に病んでいる」と発言したのを受け、Fox Newsが謝罪を発表するという異例の事態となった)。

おそらく、トゥーンベリさんに対して右派の間でもっともよく聞かれる意見は、彼女が自分の意思で行動しているわけではなく、気候変動に対する彼女の親の意見を代弁する道具に利用されている、というものだ。右派は統一見解として、10代の少女が親の入れ知恵なしに気候変動について確固たる意見を持てるはずがない――あるいはカールソン氏の言葉を借りれば、トゥーンベリさんは「子どもを利用して権力を要求する」左派のやり口のいい例だ、と再三にわたって主張している。昨年パークランドの子どもたちが証明したように、左派に対する右派の言いがかり――奴らはエリート主義で、優遇されていて、ミュージカル『ハミルトン』の大合唱や男女共通トイレやネット規制のために、労働階級の価値観を蔑ろにしている――の中でも、子どもが左派の言い分を支持するのを見るほど虫唾が走るものはないようだ。たとえそれが中絶の自由であれ、銃規制であれ、今回の場合なら、海面上昇で家や愛する者が消滅しない権利であれ。

Translated by Akiko Kato

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