SKY-HIとSALUが語る、古いシステムからの脱出「もっと幸せなゴールを作るために」

ー前作『Say Hello to My Minions』は割と二人の衝動というか苛立ちのようなものも垣間見える作品に仕上がっていて、リリックのダブル・ミーニングといったトリッキーさも多かったと思うんです。それを経てからの今作を聴くと、音楽的な余裕のようなものを感じました。今作においては二人とも純粋に楽しみながら作っているのかな、と思って。

SALU:そうですね。

SKY-HI:楽しむと同時に、バイアスとか固定観念がなければないほど自由ってことだと思うんですけど、実際、それはめちゃくちゃ難しいんだなというのを感じました。そういった固定概念を「俺、着てるな?」と気がついて、「脱いだら気持ちいい!」っていう感覚が二度ほどありましたね。


Photo by Masato Moriyama

ーSKY-HIさんは『JAPRISON』で、これまでとは違う角度からシーンや業界のことをラップしていた。SALUさんも今年に入って新曲「RAP GAME」を発表しています。あの曲も、シーンをどこか俯瞰しているような内容だなと感じました。その二人のタイミングや目線が合った、という意識はありますか?

SKY-HI:前作は、SALUが『GOOD MORNING』を出して、俺が『OLIVE』をリリースした後だった。その時は「この国で、なんとかしてラッパーが作るポップスを作れないものか?」とトライした後だったから、「かっこいいラップをたくさんするぞ」という意気込みで作ったんです。今回は、そういう意味では国内外、どちらとも状況が変わってきて、もっとラップ・ミュージックやラッパーが自由になれるというか、好きにやるっていうか、そういう気持ちで作っていましたね。



ー参加しているプロデューサーも国内外のメンツが集まっていますよね。

SKY-HI:タイミングですね。最初からCHAKI(・ZULU)さんとSUNNY BOYは決めていて。

SALU:そうでしたね。

SKY-HI:韓国人のプロデューサーのAPROは、韓国の友人のReddyの曲を手掛けてるので知って、インスタフォローしたらDMが来たって感じです。DMでいきなり「Hi SKY-HI!」と連絡が来て、それで友達になったんです。APROが東京に来てるタイミングでたまたま俺のライブがあって、そこにSALUがフィーチャリングでも登場してたから、それで必然的に参加してもらいました。同じく韓国のGroovyRoomも、たまたまtofubeatsの客演で俺が出た東京のイベントに、彼らもゲストで出ていて。



ーちなみに、個人的に一番気になったビートメイカーはSOURCEKEYなんですが、彼に関しては何も情報がなくて……。

SKY-HI:それは俺っすね(笑)。

ーSKY-HIのプロデューサー名義、ということですか?

SKY-HI:『JAPRISON』くらいから、自分で上モノとドラムの音を組み立てて、それが出来上がったらSHIMIさん(プロデューサー・ユニット、BUZZER BEATSのメンバー)に渡して、いわゆるビートメイキングにおいて必要な一番大変な部分ーーエンジニアリングであったりマニュピレーションであったりーーをやってもらっていたんです。でも、そこまでやるんだったら、名義をちゃんと付けてやってみようかなと。

変名にした理由は、プロデューサーの名前が一覧で載った時に、俺の名前が入ってると色が付いてるみたいで嫌だなあと思って。SALUと、「名前、何にしよっか? やっぱりイニシャルはSだよね」と色々話して、この名前にしました。


Photo by Masato Moriyama

ー聞き慣れない名前だったので、誰かの変名かなとも思っていたのですが、まさかご本人だったとは。先ほども制作環境について少し触れていましたが、どんな環境でレコーディングを進めていたのでしょうか。

SALU:厚木にある僕のスタジオで録っていました。僕がエンジニアをやりながらトラックや、「どんなことを言うか?」という曲ごとのトピックも一緒にスタジオに入って、二人っきりでレコーディングしていきましたね。13時間くらいぶっ続けで作業して、4、5曲作った日もあって。

SKY-HI:そうそう、途中でコンビニに行ったくらい。

ーそのペースってお二人にとっては普通ですか?

SKY-HI:それは分からないですけど、SALUのスタジオに入った日はめっちゃ楽しかったですね。「その日にいっぱいやらないとヤバい」っていうことだけ決まってて。これ良くない?って言いながら音を足したり抜いたりして作っていったんです。

ーそうしたセッション感も、二人ならではですよね。

SKY-HI:今回は特に、遊んでいたらできたって言う感じが強いですね。それは嬉しいことだと思っています。

ーChaki ZuluやSunny Boyといった国内のプロデューサーとレコーディングする時も、同じようなヴァイブスでしたか?

SALU:その二人との制作はめっちゃ早かったですね。スタジオに入って、一人15、20分くらいでヴァースを録り終わって、その後、ChakiさんとSunny Boyさんがアレンジして完成する、っていう感じでした。

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