日本のバンドが海外進出を果たすには? トップランナーに訊く成功までの道のり

海外で求められている日本発のバンド像とは?

─とはいえ、海外で活動する上で大変だったこと、不便に感じたことなどもたくさんあったんじゃないでしょうか。

Go:我々が慣れ親しんでいる「ポピュラー・ミュージック」や、それにまつわるカルチャーって、結局は米英を中心とした英語圏のものじゃないですか。英語圏にいる人たちにとっては、自国の音楽はヒットすればそのまま世界中のオーディエンスに広がるし、アメリカで一番売れたバンドは、他の国でも一番売れる。でも、日本で一番売れたバンドがコーチェラに出たり、マジソン・スクエア・ガーデンに出演したりすることは滅多にない。当たり前なんだけど、そういうのを肌で感じるようになって。

こちらでは僕ら、絶対に「日本人」「日本のバンド」と見られますからね。ただ、ネイティブで英語は話せない代わりに、日本人しか持っていない感覚というのも絶対あるわけじゃないですか。彼らがヒップホップを浴びていた時に、僕らはJ-POPを聴いて育ってきたわけですから(笑)。そういった独自性をこちらのシーンやメディアにどうアピールし、どう受け入れてもらえばいいか。それを常に考えているし、チャレンジでもあります。


超満員のオーディエンスが幾何学模様のライブを見守っている光景。Goはインタビュー中、刺激を受けた「海外で活躍する日本人バンド」として、BORISやMONO、アシッド・マザーズ・テンプルに加えて、現在はロンドンに拠点を置くBo Ningenの名前も挙げていた。

─そこはある程度、戦略みたいなものもありました?

Go:例えば日本人というだけで、アシッド・マザーズ・テンプルやフラワー・トラベリン・バンド、裸のラリーズとかと比べられるわけです。音楽性は違っていても、「日本人くくり」みたいな。それは仕方がないとしても、こっちのフェスって白人以外のバンドがヘッドライナーになることがあんまりないんですよ。ヒップホップはまた別だけど、結局バンドだとまだそういう文化が続いている。なので、そこでどうやって白人以外のバンドが出られるのかを、まあ戦略的というよりは、現実を受け入れつつ抜け道を探るというか。

そりゃそうですよね、外国人が日本に来て、片言の日本語で生粋のJ-POPをやろうとしても、そんなに面白くないじゃないですか。彼ら(海外の人々)と同じような音楽をやっても、「いや、もういるから」ってなるのは当然で。

─確かに(笑)。

Go:「だったら僕らにしかできないことってなんだろう?」ということを考えるようになりましたね。

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今年6月にクルアンビンと共演した北米3公演は全てソールドアウト(NYのセントラル・パーク公演ではコナン・モカシンも登場)。オファーが届いたきっかけは、マーク・スピア(Gt)が幾何学模様のファンであること。このように彼らは、海外でミュージシャンズ・ミュージシャンとしての地位を確立している。

※関連記事:クルアンビンを育んだ「異文化」と「ミニマリズム」の源流
※関連記事:OGRE YOU ASSHOLE×コナン・モカシン対談:両者の考える「サイケデリック」


─海外で活動していく中で、日本人バンドとしてこんなことが求められているなとか、こういうのが受け入れられやすいのだな、などと思ったことはありますか?

Go:やっぱり「欧米の人が思う日本らしさ」がしっかり出ていると、ウケるのかなとは思いますね。見た目だけでもそう。あとは英語を話すのが苦だと難しい。こっちにも音楽業界の本とかあるので、最初はそういうのを読んだりネットで調べたりして、マネージャーやプロモーター、ブッキング・エージェントなどの存在を知りました。「ツアーってどうやるんだろう?」と思ってBORISのFacebookを読んだり(笑)、Facebookイベントに直接コンタクトしたり。そういう調べ物が楽しいと思える人は向いていると思います。ビザの取得についてなども調べなきゃならないのに「そんなの面倒臭い、音楽のことしか考えたくない」となってしまうようだと、ちょっと大変かなって。

─ぶっちゃけ、バンド活動やレーベル運営などの経済的な部分はどうやって回しているんですか?

Go:僕ら5人組のバンドなんですが、マネージメントも自分たちでやっています。で、ブッキング・エージェントがアメリカとヨーロッパにいて、彼らがライブのブッキングをしてくれている。今、「Guruguru Brain」というレーベルをTomoと2人で運営しているんですが、そこではアジアの音楽を出していて。海外で一緒に住みながら、どうやったら音楽で食べていけるのか最初は試行錯誤しましたね。一晩のライブでいくらもらえれば、5人の全員が食べていけるか?とか。今はそれで生活できるようになったんですけど、最初はメンバー全員が別の仕事をしていて、そこからちょっとずつ音楽だけで食べていけるようにシフトしていきましたね。


Guruguru Brainの最新リリースは、タイの5人組サイケバンド、カーナ・ビーアブード(Khana Bierbood)が今年1月に発表したアルバム『Strangers from the Far East​』。

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