日本のバンドが海外進出を果たすには? トップランナーに訊く成功までの道のり

日本語のまま発信したものが、世界のどこかに届くのも夢じゃない

─今は、メンバーの皆さんはどこにお住まいなんですか?

Go:僕とTomo Katsuradaはオランダに住んでいて、あとの3人は日本にいます。東京、大阪、福島と離れているんですけどね。2年前までは高円寺でハウスシェアして、仕事の合間を縫ってツアーに出ていました。そんな時期が2、3年続いたのかな。

─アムスに住むメリットはどこにありますか?

Go:ヨーロッパのど真ん中にあって、パリにもロンドンにも行きやすい。それから英語が通じるところですね。あと、フリーランスの基準がヨーロッパの中でも比較的低く、ビザ発行が日本人にもすごくハードル低いんですよ。何よりストレスが本当になくて。日本にいるときは「ストレスをどう発散するか?」ばかり考えていたんですけど、こっちでは天候と冬の寒さくらいしかストレスがないんですよね(笑)。日本の冬は結構フレッシュで好きだったけど、こっちの冬はただただ陰鬱なんです。


『Masana Temples』収録曲「Nazo Nazo」

─みなさん、バラバラな場所に住んでいるのに活動が成り立っているのは、インターネットの力も大きいですか?

Go:それは大きいですね。普段から、例えば鼻歌だけとかそういうアイデアの断片を送り合ったり、自分の感覚に引っかかったもの……楽曲に限らず映画や絵画、ネットで拾った動画などのイメージを毎週送り合ったりして、それを共有しながら「この映像にはこういう音が付けられるかな」みたいな感じで、さらにアイデアを乗せていくというか。そうやって音楽以外のところからインスパイアされて曲が生まれることも多いですね。

─とても興味深いです。具体的にはどんなイメージが共有されてきたのですか?

Go:最近だと、例えばゴブリンが手がけた『サスペリア』のサントラや、ポポル・ヴー、ビトウィーンの音源……あとはスピリチュアル・ジャズもメンバー内で流行っていますね。そういうものにインスパイアされつつ、自分たちが持っているオリジナリティとは何か?とか、自分がいいと思っている感覚と、他のメンバーのそれをどうやって混ぜるか、みたいなことをいつも考えています。それってインターネットを介しているからこそ出来ることなのかなと。動画のイメージ共有とか、直接会ってはやりづらいじゃないですか。

─確かに。

Go:昔みたいに、みんなでスタジオに入って朝までジャムるとか、そういうことを毎日のようには出来なくなったけど、その代わり今はツアーの始まる10日前とかに集まって、スタジオに入ってそこで曲を作ったりジャムったりしているんです。


幾何学模様がセレクトしたプレイリスト。ブルックリンのイベント団体、PopGun Presentsによる企画。

─非常に夢のある話ですよね。遠距離でバンド活動を続けていくなんて昔は考えられなかったけど、今は地球の裏側に住んでいてもバンドのメンバーでいられる。それに、自分たちの音楽を理解してくれる人が周りに一人もいなくても、地球上のどこかには熱狂してくれる人がいる可能性もあるし、そういう人にちゃんと届くようになったわけですから。

Go:そうなんですよ。すごくグローバルに考えられるようになったのは大きいですよね。「メンバーとはなるべく近い距離にいて、デモテープをレコード会社に送って、下積みを積んでからデビュー」みたいなことだけが選択肢ではなくなったという。僕ら、英語が全く分からなくても洋楽を聴いて感動したのと同じように、日本語のまま発信したものが、世界のどこかで暮らしている誰かに届いて感動してもらうことすら夢じゃないっていう。その可能性は、おそらく僕ら以外のバンドにもあると思うし。

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