エアロスミスのメンバーが解説する、ラスベガス公演セットリストの全貌

ラスベガスでのレジデント公演「Deuces Are Wild」を行うエアロスミス(Katarina Benzova)

エアロスミスのスティーヴン・タイラー、トム・ハミルトン、ブラッド・ウィットフォードがラスベガスでのレジデント公演「Deuces Are Wild」の全曲を解説する。

エアロスミスがラスベガスで行っているレジデンス公演「Deuces Are Wild」のセットリストを毎晩作るのは容易なことではない。彼らが半世紀に渡ってヒットを飛ばし続けていることに加えて、ファンのお気に入り曲、ディープカット曲(訳註:商業的に成功しなかった楽曲のこと)、大好きなカバー曲などを、約90分間のコンサートにすべて入れ込まないとダメなのだ。さらに、オリジナルメンバーが5人全員揃っているこのバンドは、それぞれのメンバーが公演を成功させるためのアイデアを持っている。ブラッド・ウィットフォードが説明する。「何度も行ったり来たりしている。30秒で決まることもあれば、メンバー全員が『この曲、やろうぜ。これはどうだ?』と10分間言い続けることもあるよ」と。

コンサートごとに演奏する楽曲を自由に変えることが許されているため、「ムーヴィン・アウト」や「ドロー・ザ・ライン」などの曲は2〜3回試しに演奏されたあとで、あっさりとセットリストから外された。しかし、「ドリーム・オン」や「やりたい気持ち」などのヒット曲は、外されることなく今も毎晩演奏されている。

この夏、エアロスミスはラスベガス公演と同じ内容のコンサートツアーを東海岸で行ったのだが、9月21日からはラスベガスのパークMGMにあるパーク劇場に戻り、途中で休暇を挟みながら2020年6月までレジデンス公演を続けることになっている。

ある日の休暇時間に、ブラッド・ウィットフォード、トム・ハミルトン、スティーヴン・タイラーに最新セットリストの各曲について話してもらった。

「トレイン・ケプト・ア・ローリング」(ティニー・ブラッドショー/ヤードバーズのカバー、1974年)

テイラー:この曲は俺たちがバンドを始めて最初に覚えた曲の一つで、当時の観客の反応が俺たちの望み通りだった。今、この曲をプレイして、観客があの頃と同じ反応をするのを見ると、当時の興奮を思い起こすよ。エアロスミスの前にいくつかのバンドで活動していた頃、いつもヤードバーズを聞いていたから、エアロスミスを始めた頃に最初にちゃんと覚えたのがこの曲だった。

ハミルトン:ジョーも、スティーヴンも、俺も、10代の頃はヤードバードに夢中だった。ジョーと俺は14のときから、一緒にバンド活動するときは必ずヤードバーズの曲をプレイしていたものだ。この曲は俺たちがあの頃に無意識に選んだもので、文字通り、それ以来ずっとプレイしている。俺たちにとってはエンブレムみたいな曲だし、今でも演奏するのが楽しい。観客がびっくりして目を覚ますくらい激しいやつでライブを始めたいと、俺たちはいつも思うんだよ。

ウィットフォード:この曲にはたくさんの物語がある。バンド結成初日からこの曲をやっているけど、アルバム『飛べ!エアロスミス』に収録したものですら、何度か変化している。あれこれ手を入れたり、ちょっとだけ変えたり、スローにしてみたりして、最終的にあのアルバムに収録されたのがこのスロー・バージョンだった。そのあと、スピード・バージョンもやってみた。これはライブ録音という触れ込みだったが、実はライブ録音じゃない。(プロデューサーの)ジャック・ダグラスがスタジオで作り直して、大きなアリーナで録音したような音に加工したんだ。観客の歓声は、確か『バングラデシュ・コンサート』から拝借したものだと思ったな。つまりライブっぽく捏造したってこと。みんな、あれが実際のライブだと思っているようだけど、実は違うよ。

「デュード」(1987年)

ハミルトン:今回のラスベガス公演の前はしばらくこの曲をプレイしていなかった。スティーヴンが歌詞に関してちょっと思うところがあったようなんだ。まあ、歌詞がちょっとバカすぎると思ったらしいが、俺はそんなふうに感じたことは一度もない。メロディも、ビートも、ギター・パートも最高にいいから、歌詞の内容なんてほとんど意識しないだよ。でも、あの曲が作られた頃のロックの世界を思い起こすと、当時ロック・シーンで活躍していたのはカリフォルニア出身のバンド、例えばモトリー・クルーやポイズンなどで、彼らを冷静に観察した様子があの曲で描かれていると思うね。連中は女みたいな格好をしていた。そういうシーンの様子を描いた曲をプレイするって至極まともだよ。この曲は演奏するのがけっこう大変だけど、観客はこの曲でライブモードのスイッチが入る。抵抗できないくらい魅力的な曲さ。

ウィットフォード:スティーヴンがモトリー・クルーのヤツ(ヴィンス・ニール)とつるんでいたのを覚えているよ。確か、ヤツの「デュード」の使い方にスティーヴンは感銘を受けたと思った。あの頃、ヤツは何でもかんでも「デュード」って呼んでいた。同じ頃にジョーが面白いアイデアを持ち寄ったから、この二つが合体したのさ。(プロデューサーの)ブルース・フェアバーンがいい仕事してくれたのも大きい。ファンはこの曲が好きだね。この曲の知名度を上げたのが映画『ミセス・ダウト』だ。メジャーな映画で使われると、多くの人が耳にすることになるから。ただ、あの映画でこの曲を聞いていても、誰の曲かまで知らない人も多いようだけどね。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE