追悼ダニエル・ジョンストン、94年のパール・ジャムによるカバーを回想

1994年のブリッジ・スクール・ベネフィットでダニエル・ジョンストン「Walking the Cow」を披露したエディ・ヴェダー

エディ・ヴェダーが繰り返し演奏している、1983年リリースのダニエル・ジョンストン「Walking the Cow」。初めて披露した1994年のブリッジ・スクール・ベネフィットのステージを回想する。

先日、悲しい知らせが世界中を駆け巡った。アウトサイダー・フォークミュージシャンのダニエル・ジョンストンが、テキサス州ヒューストンの自宅で自然死によって他界してしまった。心身を衰弱させる精神疾患に苦しみながらも、彼は一生を通じて素晴らしい楽曲とアート作品を生み出し続けた。

「ダニエルはシンガーであり、ソングライターであり、アーティストであり、みんなの友人でした」と、ジョンストンの家族が彼の死を伝える声明で述べた。そして、この声明は「成人後のほとんどの人生を精神的な問題との葛藤に費やしたとはいえ、ダニエルは多数のアートと楽曲を生み出す過程で自ら精神疾患を克服しました。そして、『太陽は僕に降り注ぐ』や『最後に真実の愛が君を見つけてくれる』などのメッセージが、多くのファン、アーティスト、ソングライターをインスパイアしました」と続いた

ジョンストンの不朽の名曲の多くは、1980年代初頭に彼が子供時代を過ごした寝室と地下室で、安いラジカセを使ってレコーディングされた。インターネットなどない時代だったが、彼のファンがカセットに録音して、それを友人に広めるという方法で、ジョンストンの音楽は口コミで拡散していった。そして、彼の音楽への関心が爆発したのが1993年で、カート・コバーンがジョンストンの1983年のアルバム『Hi, How Are You(原題)』のジャケットが描かれたTシャツを着たことがきっかけだった。当時、ジョンストンは精神科病院に入院中だったが、そんなことは関係ないとばかりに次回作の出版権を争うレコード会社の入札合戦が白熱し、最終的にアトランティックが権利を獲得した。

しかし、1994年のアルバム『FUN(原題)』は不発に終わり、アトランティックはそそくさとジョンストンを手放した。ところが彼の人気が衰えることはなく、多くのファンが彼の音楽を求めて、初期の純真無垢な楽曲を発掘するようになった。そして、トム・ウェイツ始め、TVオン・ザ・レディオ、ベック、ブライト・アイ、デス・キャブ・フォー・キューティー、Mワードなど、多くのアーティストやバンドが彼の曲をカバーした。それが証拠に、2017年に行われたジョンストンの最後のツアーで交代しながらバックバンドを務めたのは、ウィルコ、ビルト・トゥー・スピル、フガジのメンバーたちだった。

ジョンストンの楽曲の中で一番人気と思しき曲は『Hi, How Are You』収録の「Walking the Cow(原題)」だろう。1994年のブリッジ・スクール・ベネフィットでこの曲を演奏するパール・ジャムの動画をご覧いただきたい。パール・ジャムとしてこの曲を演奏したのは過去に2度だけだが、エディ・ヴェダーは2008年のツアーで、この曲を毎公演のオープニングで演奏した。また、2018年3月にはブラジルのサンパウロで行ったライブでも演奏している。ジョンストン自身は2017年のツアーで毎回この曲を披露していた。そのときの様子は下記の動画を見てほしい。





Translated by Miki Nakayama

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