シンディ・ローパー独占取材 日本との固く結ばれた絆、今を生きる女性へのメッセージ

ー振り返ると、最初からあなたの声、それに服や自己表現のスタイルは際立ってユニークでした。あれは自然に生まれたものだったんでしょうか。

シンディ:というより、私がずっと感じてたのは……色や音を使うことが、私にはとても重要だったの。サウンド、リズム、言葉、それに音楽のキー(調)が、どんなふうに人に影響を与えるのか。もちろん、私は他の人みたいになりたくなかったし、群れのなかの羊にはなりたくなかった。自分が世界においていまどこにいて、どこに向かってるのか、そこを理解することがすごく大事だと思ってたの。私だけじゃなくて、みんなが。そして、自分はどんな価値のあるものをもたらせるのか。もし有名になるとしたら、そこを見極めておきたかった。山の頂上に登ってみたら、何も言うことがなかった、みたいなのは嫌だったの。だからこそ、いろんな国を訪ねたときには目を開き、耳を傾けようと思って。自分をオープンにしなきゃいけないのよ。ね、日本では『キンキーブーツ』も上演されたのよね?。

ーええ。あのミュージカルは大人気で、今年再演もされました。あなたにとって『キンキーブーツ』の音楽を作曲し、トニー賞を受賞し、世界で大ヒットしたことは、まったく新しい領域が開けたような感覚だったんでしょうか。それとも、長年やりたかったこと?

シンディ:ブロードウェイには馴染みがあったの。あと、(脚本を書いた)ハーヴェイ・ファイアスタインと、(演出/振付の)ジェリー・ミッチェルとは前から知り合いで。二人からプロジェクトを持ちかけられて、私の方も、以前からの知り合いで尊敬もしてる人たちと仕事をするのは面白いんじゃないか、って思いはじめた。でも、自分が音楽を全部担当するとは思ってなかったのよ。二人が欲しいのはキャッチーな曲で、「それなら作れるかな」って感じで。ただ、私にとっては自分の音楽のスタイルや曲調に多様性を持たせるチャンスでもあった。本当にいろんな人が出演するミュージカルだから。でもやっている間に、それまでも自分は近いことをやってきたことに気づいた。つまり、“ヒューマニティ”、人間性ね。大勢の人がある瞬間のために集まって、素晴らしいプロジェクトを形にする。それにあのミュージカルを観にいくと、劇場に入ったときと出たときでは、みんな違う人になってるのよ。前にはない思いやりを持つようになる。それは本当に、見ていて感動的だった。


1983年撮影のシンディ・ローパー(Photo by by Annie Leibovitz)


2019年撮影のシンディ・ローパー

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ーあなた自身はデビュー当時といまでは、何が大きく変わって、何が変わらないと感じますか?

シンディ:私は、世界は常に変化していると思う。実際、何もかもが変化する——確かなのはそれだけ、と言ってもいいんじゃないかな。世界はどこかで立ち止まったりしない。物事は常に動き、前に進み、変わっていく。そして私も含めて人はみんなずっと成長していくし、変わっていくのよ。私も最初にこの世界に足を踏み入れたときとは同じじゃない。いろんな経験を積んで、いろんな人たちと知り合ってきて。すべてに影響されて、私たちはずっと変わりつづけてる。それを認めて、受け入れなきゃ。それが私の実感ね(笑)。最初に有名になった頃、友だちがずっと『すべては変化する』って言ってて。当時の私はいつも怖がってたから。『いまはうまくいってるけど、これからどうなる? ずっとこのままのわけがない』って。でもそういうものなのよね、ただ。自分も周りも変わっていく。ある意味、人間がちゃんと大事にしないから、地球が以前とは変わってしまったところはあると思う。本当に大事なものなのに。将来のためだけじゃなくて……自分がどこかの海岸で捨てたものは、他の海岸に打ち上げられる、ってこと。私たちはみんな繋がってるのよ。自分だけうまく逃げられるなんてことはありえない。生態系、物理的なエコロジーとして繋がってるだけじゃなくて、精神的なエコロジーとしてもお互い繋がってると思うの。一人ひとりがすることがすべて小さなさざ波を立てて、周りに広がり、最後には自分に返ってくる。世界はそうやって成り立ってる。地球は平面じゃないんだから。だから、一番危機を感じるのは、やっぱり環境のこと。いま私たちが目を覚まさないと、もう救えないところまで急激に変化しつつあると思う。私自身もそれに加担してるのよ。例えば、使うものが何でもかんでもプラスチック製になったでしょう? 前はガラスだったものが、プラスチックになったり。

ー本当にそうですね。ペットボトルとか。

シンディ:で、いまではプラステチックの大きな山や島が海中にできてる。そして魚やクジラがプラスチックを飲み込んでは死んでいって。どうしたらいいのか、私にはわからないけど……科学が手助けになるのは確か。いま世界の何処かにいる、優れた子どもが溢れかえったプラスチックをなくす方法を見つけてくれるかもしれない。いまの私たちの生活、暮らし方は明らかによくないのよ。なんだか、今回のツアーや音楽と話が離れちゃったけど(笑)。でも、みんな繋がってる、っていうところでは同じ。それに音楽は人にエネルギーを与えるし、癒すことにもなる。私はいまでも、音楽は世界を変えられると思ってるの。音楽は人々をひとつにできるし、考え方を変えることもできる、って。この目で見てきたしね。音楽を通じて人は他の人の立場に立ったり、お互いの物語に耳を傾けたりできるんじゃないかな。

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