なぜアーティストは壊れやすいのか? 精神科医・本田秀夫と手島将彦が音楽業界を語る

─あと、アーティストが何か問題を起こしたとき、身を粉にして作った作品が回収されてしまうみたいなこともありました。バッシングを受けた上で、身を粉にして作った作品までなきことにされてしまうのは、アーティストではなく、社会側に問題があるように感じてしまいます。

本田:今、依存症の領域では、作品自体を自粛するというのはおかしいと、精神科の専門家たちは言っているんですよ。むしろ、厳罰主義というのはかえって闇を深めるだけだ、と。たしかに罪を問われることはあるかもしれないけど、あくまで更生をさせるということの方が大事で。そのために必要なことというのは、その人に生きる目標をちゃんと与えること。ただ謝ってもう二度とやりませんって言っている人は、案外またやっちゃうわけですよ。弱い自分ということをちゃんと認めて、そのリスクといつも隣り合わせだということを分かりながら治療を続けることが、むしろ重要だと言われているんです。そのためには本人をやたらバッシングするのではなくて、やっちゃったという事実自体は認めつつ、その人の人格全体を否定するわけではなく受け入れてあげることが重要なんだと思います。

─この本の根底には、手島さんの感じてきた社会に対する疑問という視点もあるんじゃないかと思いました。

手島:極端に言っちゃうと、一度全部世の中のせいにしてみてはいかがでしょうと。突き詰めていくと個人のせいというのはほとんどないような気がして。

本田:たまたま今の世の中だから上手くいっている人もいるだろうし、時代が違えばその人は上手くいかないかもしれないですよね。そんなことはいくらでもあると思うんですよ。

Rolling Stone Japan 編集部

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