スティーヴン・キングが語った、トランプの「悪夢」と『ストレンジャー・シングス』

スティーヴン・キングが新作ホラー小説『The Institute』、ドナルド・トランプの「悪夢」、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』が気に入っている理由を語ってくれた。Krista Schlueter/The New York Times/Redux

スティーヴン・キングが新作ホラー小説を発表する。「フィクションの世界ではトランプを予見していた。常に悪夢の物語に登場し、その悪夢が今現実となっている」と、トランプの「悪夢」について、そして『ストレンジャー・シングス 未知の世界』について語った。

ドナルド・トランプが大統領に選出される数ヶ月前、スティーヴン・キングは新作小説を書き始めた。米現地時間9月10日発売の新作『The Institute(原題)』は、真夜中に親元から誘拐されたのち、謎めいた施設に監禁されている12歳の少年が主人公なのだが、これを読んだ読者の頭には米国政府のいくつかの移民政策が浮かんでくるだろう。「The Instituteのストーリーと、檻に閉じ込められたあの子供たちの写真に、私はどうしても共通点を見出してしまう。時として、フィクションが現実を予知することがあるんだ」と、キングは語る。

キングの作品が政治の未来を予知したのはこれが初めてではない。1979年の作品『デッド・ゾーン』にはトランプに似た意欲的な大統領が登場し、この登場人物がホワイトハウスに入ってしまうと世界が滅亡の危機に瀕することになる。「フィクションの世界ではトランプを予見していた。常に悪夢の物語に登場し、その悪夢が今現実となっている。しかし、自分の世界観を読者に押し付ける気ははないね。私はジョージ・オーウェルではないし、この作品は彼の『1984年』でもない。もともと寓意物語のつもりはなかったのだから」と、キングが言う。

キングは自宅のあるメイン州から電話でインタビューを受けた。2週間ほど前、彼はマサチューセッツ州フォックスボーローに旅行して、生まれて初めてローリング・ストーンズのコンサートを見たと言う(「キースは最初ためらいがちな様子で、少し時間が必要だったが、すぐに火が点いた」がキングの感想だ)。2017年に公開されて、ホラー映画史上最高の興行収入を叩き出した作品『IT/イット“それ”が見えたら、終わり』に続く新作に、人々が相変わらず大きな興味を示してくれることを、キング自身も非常に喜んでいる。「たぶん(1990年の)ティム・カリーが主演したテレビのミニシリーズの『IT/イット』を見た子供たちがたくさんいるのだと思う。当時、あの子たちはあの作品を見て、オシッコをチビるくらい怖かったはずだ。それなのに、彼らはもう一度見たくてウズウズしたんだよ」とキング。

『IT/イット』同様に『The Institute』も、言葉にならないほど邪悪な勢力に子供たちが力を合わせて対抗する話だ。ただし今作のひねりは、子供たち全員に念力や超能力が備わっている点で、彼らが監禁されている施設を運営する大人たちは、この子供たちに医学的な実験を強要する。「書きたかったのは『トム・ブラウンの学校生活』のような物語だった」と、キングが説明する。『トム・ブラウン〜』はイギリスの寄宿舎学校を舞台にした1857年のトマス・ヒューズの作品だが、キングは「舞台を地獄にしてね」と付け加えた。

Translated by Miki Nakayama

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