満員御礼のクラブイベント「レッスンGK」は、ほんとに公開レッスンの場所だった

イベントの立ち上げ人でありバンドのリーダーを務めるのは、レニー・“オックス”・リース。あだ名のとおり雄牛みたいなガチムチのドラマーです。どれだけ派手なフレーズを叩いても客のダンスが止まらない強いパルスが持ち味で、僕がいまアメリカでいちばん好きなドラマーでもあるけど、それ以上にコミュニティを束ねる人間力、包容力がすごい。








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彼のもとに集まったバンドメンバーも強力で、ボーカルのジョナサン・ホワードはキャッチーな歌詞とメロディを即興で紡ぎ出す天才だし、ラッパーのフェイズワンはステージ上で指揮者でもあります。鍵盤のクリスチャン・アミロン、ベースのデイヴ・カトラー、ギターのジョーダン・ピーターズ、みんなそれぞれメジャーアーティストの仕事をしている腕利き揃いで、あとキーボードのニック・セラミドとジュリアン・ポラックは忙しすぎて卒業状態なので、最近は(u)nityのアクセル・トスカが入りがち。

そして2ndステージに参加するため集まってくるメンツも、もちろん僕みたいな駆け出しが多いけれど、スナーキー・パピーのマズ・マーハーとかリズム&ステルスのレックス・サドラーとか、日本にいるとき普通に音源を聴いていたようなミュージシャンも参加してくるので驚かされます。


レッスンGKのバンドメンバーによるスタジオライブ映像

このレッスンGKのバックステージが、僕にとってはこの1年、ニューヨークでいちばんの社交場となってくれました。有名なミュージシャンがスカウトがてら遊びに来るし、これから勝負かけるぜってヤングガンたちもお互い、その場で出音が聞けるんだから話が早い。好みが共鳴しそうなプレイヤーとはすぐにインスタのアカウントを交換して、仕事の情報を回しあったり、そういう場所です。ここで結成されてデビューしたバンドも書き切れないほど存在します。

そんなレッスンGKもイベント立ち上げから4年が経ち、雨の日も雪の日もたいてい満員。最近はテレビや新聞のカメラも頻繁に入るようになって、ハウスバンドは西海岸に出張ツアーをしに出かけたり、またひとつ知名度が上がりそうなフェイズだったのですが、この11月、来年春までお休みに入ることが宣言されました。

えーどうしたの? とレニーに聞くと、いま西海岸でいちばん勢いのあるラッパーのひとり、Super Duper Kyleことカイルのワールドツアーにドラマーとしてご指名を受けちゃったんだって。そりゃ断れない。仕方がない。そんなわけでバンドの面々は充電期間、われわれ飛び入りミュージシャンたちは毎週月曜、イーストビレッジのNubluのジャムに流れているのが最新の動向だったりします。



唐木 元
ミュージシャン、ベース奏者。2015年まで株式会社ナターシャ取締役を務めたのち渡米。バークリー音楽大学を卒業後、ブルックリンに拠点を移して「ROOTSY」名義で活動中。twitter : @rootsy

◾️バックナンバー
Vol.1「アメリカのバンドマンが居酒屋バイトをしないわけ、もしくは『ラ・ラ・ランド』に物申す」
Vol.2「職場としてのチャーチ、苗床としてのチャーチ」
Vol.3「地方都市から全米にミュージシャンを輩出し続ける登竜門に、飛び込んではみたのだが」
Vol.4「ディープな黒人音楽ファンのつもりが、ただのサブカルくそ野郎とバレてしまった夜」
Vol.5「ドラッグで自滅する凄腕ミュージシャンを見て、凡人は『なんでまた』と今日も嘆く」
Vol.6「満員御礼のクラブイベント『レッスンGK』は、ほんとに公開レッスンの場所だった」

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