アユニ・DがPEDROで手に入れた「オルタナティヴ」な価値観

「自分が書いた歌詞を自分の口で歌えるというのは全然感覚が違う」

─アユニさんは、歌詞を書くにあたってどういうことを意識しているんでしょう? BiSHで書く歌詞とは違うなという印象があります。

アユニ:BiSHの歌詞は、自分のことしか書いていなかったんですよ。誰にも媚びを売らずに自分の思ったことを書いていた。いろいろな音楽を聴くようになって様々な歌詞の書き方を学んだので、妄想で誰かになりきったり、好きな映画の脇役の子になりきって書いてみたりしています。本や映画を観て「パワーワードだ!」と思ったことはメモしたり。あと、歌詞に迷ったらブックオフに行って本を買って、めっちゃ読んだりもしました。『zoozoosea』という前回のミニ・アルバムのタイトルも、映画の中で誰かが言っていた発言なんです。勝手に自分で言葉を組み合わせて造語を作るときも多いです。「猫背矯正中」の中に「ファンシー虚無主義者」って単語が出てくるんですけど、私の思う人物像を言葉にしたらファンシー虚無主義者という言葉が出てきて。



─漫画なり映画なりに、具体的にインスパイアされた曲はありますか?

アユニ:「Dickins」という曲は、『ローズ・イン・タイドランド』という映画に出てくる、あまり大人になれないディケンズという男の子を基に書きました。ドラッグ中毒で両親を亡くした10歳の少女ジェライザ・ローズが、誰もいない街で1人で暮らしていくみたいな結構ディープな映画で、結構エグかったので印象的だったんです。「STUPID HERO」はスナフキンみたいな自分の中で憧れている男の人を妄想で作って、その人のセリフとしてかぎかっこの中の歌詞は書きました。その他は松隈さんの仮歌に入っていた仮詞から広げたものもありますが、自分を基に書いた曲ですね。





─自分で書いた歌詞を、BiSHで歌うのと、PEDROで歌うのでは、感触は違ったりするものなんでしょうか。

アユニ:自分が書いた歌詞を自分の口で歌えるというのは全然感覚が違いますね。人の口を通して自分の歌詞が世に放たれるより、自分の口で言えるほうが本望じゃないですけど気持ちがいいです。


Photo by OGATA

─以前別のインタビューで、いい意味で周りのことが気にならなくなったと言っていたじゃないですか? それも歌詞を妄想で書いたりするようになったのと、連動しているんでしょうか。

アユニ:そうですね。前までは周りを気にしすぎた結果、自分が嫌になってヘイトが溜まって、それを歌詞にして発散するみたいな感じだったんですけど、今はそういうことは全然なくなりましたね。

─BiSHの「本当本気」とかは、まさにそういう書き方だったのかなと。

アユニ:あれは完全に人が嫌で嫌で、自分が思っていることを書くぞ! って書いた歌詞でしたね。



─アユニさんは、同調圧力みたいなものに対してストレートに嫌だなと思うし、そこに媚びない。そこがいいところだと思います。もっと広く考えると、今の社会に対して、息苦しさとか感じたりしているのかなと思って。

アユニ:いや、今まで世の中生きづらいとか、自分が昭和とかもっと昔に産まれても生きづらいんだろうなと思って生きてきたんですけど、それって自分以外のことを考えているから生きづらいのかなと思って。いい意味で、自分を中心に世界が回っているんだと思い込むようにしたら、だいぶ楽になりました。

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