ブリング・ミー・ザ・ホライズン単独公演レポ 爆音の中で作り出した巨大な聖域

ブリング・ミー・ザ・ホライズン(Photo by Kazushi Toyota)

『SUMMER SONIC EXTRA』として8月19日に東京・新木場スタジオコーストで開催された、ブリング・ミー・ザ・ホライズン単独名義での来日公演。

フェスが開催されるごとに日本人リスナーのポップミュージックに対する感度の低さや「耳のガラパゴス化」を指摘する声を目にするが、この日はズバリと完売。世界的に見てもロックバンドのシーンがこれだけ維持されている国として日本は貴重だが(ガラパゴス化ともいえるが、独自の生態を持ってるという見方もできる)、だからこそ、ニュースクールからメタルコア、オルタナティヴメタルからメインストリームど真ん中のスタジアムロックへと急激に進化していったブリング・ミー・ザ・ホライズンへの純粋なリスペクトを携えた人々が多く集ったところもあるだろう。さらにゲストアクトにHYDEが発表されるというサプライズもあり、異様な期待感と高揚が会場中に充満していた。

「嬉しいです。僕もブリング・ミー・ザ・ホライズンが本当に好きなんですよ」という率直な言葉で、このステージに立つ喜びを表したHYDE。「AFTER LIGHT」のようにシンセの鋭利な響きとヘヴィボトムなバンドサウンドで攻め立てる楽曲を連打していくライブは、2018年からの「ソロ活動第二期」を象徴するハードさをさらに凝縮したかのようだ。ひたすら暴れ狂うライブパフォーマンスと、その中でも伸びやかに放たれる歌。純粋に、その攻撃性と気合いに持っていかれるアクトである。


HYDE(Photo by 田中和子)

一見ブリング・ミー・ザ・ホライズンとは交わらない印象を持たれているとHYDE自身も理解しているのか、「コイツつまんねえと思ったら無視してくれていい。でも、コイツいいかもと思ったら、(レスポンスを)返してもらっていいですか?」というMCもあった。しかし2000年代初頭に若者の絶望や無力感の表れとしてemo、スクリーモがゴス化を遂げ、それがメタルコアなどの音楽と合流してキッズの巨大なカルチャーになっていったこと、そのニュースクールハードコア〜メタルコアをベースにしてブリング・ミー・ザ・ホライズンのエクストリームな音楽性が形成されていったことなどを考えれば、HYDEが表し続けてきた耽美かつダークな世界観、そのダークネスをエスカレートさせた現在のヘヴィな音楽性とクロスする部分も見つかる。ただ、そんな解釈も吹っ飛ばしていくほど、何よりもこの日を真っ向から食い尽くさんとする気迫が輝くライブだった。

そして、ブリング・ミー・ザ・ホライズンである。

最新作『amo』から放たれたこの日のオープニングナンバーは「MANTRA」だった。ここ最近は世界各地のライブ/フェスでも同曲がブリング・ミー・ザ・ホライズン登場の号砲となってきたが、<Do you wanna start a cult with me?>と切り出される通り、ある種の崇拝や祈祷にも近い空間を一瞬にして作り出してしまうのがブリング・ミー・ザ・ホライズンだ。その要因はもちろんオリヴァーのカリスマ性に満ちたパフォーマンスと佇まいにもあるだろうが、暇なく繰り返されてきた彼らの音楽的な変化と、そのたびに飛躍的に増してきた音のスケール感にこそ宿っている――そう実感せざるを得ない、ヘヴィかつ鋭利であると同時に包み込まれるような感覚を覚える音の壁が、全方位に一気に立ち上がっていく。


Photo by Kazushi Toyota

たとえば最新作『amo』の素晴らしさの多くを担っていたのは、かつてなく大きく変化したサウンドデザインだ。たとえば「MANTRA」。一見王道感のあるメタリックなオルタナティヴロックかと思いきや、中域の尖った歪みを抑え、囁きに近いところまでキーを低くしたヴァースを際立たせて歌への没入感を高めている点がこれまでの彼らとは大きく異なる。あくまでギターが唸りを上げる「ロックバンドのサウンド」でありながら、その音自体の手触りや配置までがより一層キメ細やかなものになり、この日のライブでもその音作りが非常に高い精度で再現されていた。スピーカー前でも音が痛くない……というか、うるささを感じさせない。ヘヴィでありながら、その手触りはまろやか。そんなサウンドが終始響き渡って、驚くほど硬軟自在になったオリヴァーの歌唱も輪郭をくっきりと保って、こちらへ飛んでくる。

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