ウィーザー『ブルー・アルバム』知られざる10の真実

8. ビーチ・ボーイズの安っぽいグレイテスト・ヒッツ・コンピレーションに触発されたアルバムのカバー写真は、プレイボーイ誌のフォトグラファーによって撮影された

「『ブルー・アルバム』には明確なヴィジョンがあったし、それはカバー写真についても言えたことだ」クオモは2010年にiTunes Originalsのインタビューでそう語っている。「あれが『ブルー・アルバム』と呼ばれるとは思わなかったし、『ウィーザー』って呼ぶ人もいないだろうと思ってた。僕としては無題にしたつもりだった」

ミニマルでありながら印象的な同アルバムのカバー写真はシリーズ化され、以降グリーン、レッド、ホワイト、ティール、ブラックと続くことになる。ビートルズの名盤『ホワイト・アルバム』を連想しがちだが、クオモの考えたコンセプトはそんなに大層なものではなかったという。「リヴァースが意識してたのは、ドライブインで売ってるような安っぽいビーチ・ボーイズのグレイテスト・ヒッツだった」Karl Kochは2014年にUproxx誌にそう語っている。「それは正規のベスト盤じゃなくて、正式には『Do It Again』っていうタイトルだった。アメリカの市場向けに作られたコンピレーションさ。(クオモは)それをカセットで持ってて、いつもウォークマンで聴いてた。ある日彼がこう言ったんだ。『カバー写真はこれでいこう。僕らにぴったりだ』」控えめに言って、レーベルの重役たちは彼のアイディアに困惑していた。「見せてもらったそのカバー写真では、ストライプシャツ姿のビーチ・ボーイズのメンバーがブルースクリーンの前でポーズをとってた」ゲフィンのA&R代表Todd Sullivanはそう語っている。「60年代のSearsのカタログ写真みたいで、正直戸惑ったよ。『そうか、ふーん…』としか言えなかった」

ゲフィンのアートディレクター、Michael Golobはそのアイディアにより理解を示した。「リヴァースからこう言われたんだ。『ごく普通の格好で、ただ立ってるだけの写真にしたい』リヴァースはスタイルってものと無縁でいたかったんだと思う」Golobはチーム全員のイメージを形にすべく、グラマーな写真を撮らせれば業界随一のPeter Gowlandに白羽の矢を立てた。Playboy誌のヌードやピンナップ写真で知られていた70代のGowlandはその依頼を快諾し、多くのバンドマンたちが「『愉快なブレイディー家』のゴージャス版」と形容する彼のプライベートスタジオに、ウィーザーのメンバーたちを招いた。「ブルーのバックグラウンドを使うっていうアイディアをPeterに伝えると、彼は巨大な壁板とその全体を覆うカーテンみたいなものを持ち出してきた」Kochはそう振り返る。「ピーターが指示を出す様は、まさにSearsのカタログ写真撮影さながらだった」





Golobは撮影した写真にいくつか編集を加えており、ブルーのバックグラウンドの明度を上げたほか、マット・シャープの頭部部分は彼が希望した表情のものに差し替えられている。その印象的なカバー写真はアルバムが発売されるやいなや、ニュージャージーのポストパンクバンド、ザ・フィーリーズの1980年発表のデビュー作『Crazy Rhythms』のジャケ写に似ていると指摘された。その存在を知らなかったウィーザーのメンバーたちのために、Kochは入手困難だったその作品を何とか手に入れて意見を求めたところ、彼らはこう答えたという。「悪いけど、僕らがパクったのはザ・フィーリーズじゃなくてビーチ・ボーイズだ」

Translated by Masaaki Yoshida

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