ウィーザー『ブルー・アルバム』知られざる10の真実

写真左からリヴァース・クオモ、ブライン・ベル。1994年撮影。(Photo by Karjean Levine/Getty Images)

SUMMER SONIC 2019でライブバンドとしての成熟ぶりを見せつけたウィーザー。メンバーの対立、カバー写真の裏話、リック・オケイセックのヒット曲への嗅覚まで、彼らが1994年に放った傑作デビューアルバムにまつわる10のトリビアを紹介する。

25年前にウィーザーがデビューアルバムをリリースした時、メンバーのリヴァース・クオモはコミュニティ・カレッジに通う学生だった。「学校にアルバムを持っていって見せびらかしたよ」彼は1995年のインタビューでそう語っている。「みんな素っ気なかったけどね。『ふうん、いいね』みたいな感じでさ」

彼のクラスメイトたちとは異なり、音楽業界は同作に大きな関心を示した。1994年5月10日に発表された『ブルー・アルバム』こと彼らのデビュー作は、カート・コバーンの逝去とグランジ黄金期の終焉を経験したオルタナロック界における一筋の光となった。クオモ、パット・ウィルソン、マット・シャープ、ブライアン・ベルの4人は、ビーチ・ボーイズ譲りの見事なハーモニーと、巨大なアンプとクランチーなディストーションペダルで飾った問答無用のフックの数々によって、エルヴィス・コステロのような“ロックスターらしからぬロックスター”となった。カーディガンやボウルカット、D&DやKISSのポスターに言及した歌詞、そして隠そうともしないオタクぶりは、バーゲンで買ってもらった初心者用の楽器を地下室で鳴らしていた若いMTVリスナーたちから絶大な支持を集めた。アルバムはチャートで最高位16位を記録し、アメリカだけで300万枚以上を売り上げた。

「僕は自分の気持ちを誰かに伝えるのが苦手だし、そもそも誰も僕のことなんか気にかけちゃいないし、リアルなことについて語り合うっていうのはまず無理だから、僕は自己表現としての音楽にますますのめり込んでいった」クオモは自ら執筆したレーベル用バイオグラフィにそう記している。ウィーザーを世に広めた楽曲群には、彼のトレードマークである倦怠感だけでなく、はっとさせられるようなロマンチシズム、そして抗いがたいメランコリアが宿っていた。また「バディ・ホリー」のミュージックビデオで、クォモが身につけていた眼鏡の裏側から滲み出ていた彼の孤独感は、賛否両論を呼んだ1996年発表の次作『ピンカートン』でより露わになる。



『ブルー・アルバム』はロック史上最も完成度の高いデビューアルバムのひとつとされるが、多くのフロントマンがそうであるように、クオモは同作を批判的に捉えている。「どの曲も完璧には程遠いけど、正直でリアルであろうと奮闘しているのは伝わるんじゃないかな」後にクオモは伝記作家のJohn D. Luerssenにそう語っている。「どこか奇妙なレコードだけど、横になってボリューム全開で聴けば、それなりに楽しめるかもしれないね」

『ブルー・アルバム』の発売25周年を記念し、同作にまつわる10の知られざる事実を紹介する。

Translated by Masaaki Yoshida

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