映画『ロケットマン』監督が語る製作秘話、Your Song誕生の瞬間は本当に「特別」

本当にあの瞬間って「特別」だった}--
──確かにそうですね。

「エルトン・ジョン」という強烈なパブリック・イメージを演じるにあたって、決してモノマネにならないよう、あくまでもこの映画の中に息づく主人公をタロンなりに解釈した上で、エルトン像に最終的に落とし込んでいる。考えれば考えるほど、複雑な役作りが必要だよね。それを見事にやってのけた彼にはリスペクトしかない。しかもエルトン・ジョンの人生はとにかく浮き沈みが激しいから(笑)、多層的で奥深い演技が要求される。要するに彼は、そのキャリアの絶頂期にも底知れぬ孤独を抱えていたし、逆にとことんどん底まで沈んでいた時ですら一筋の希望の光を見出していた。そうやって「光」と「闇」が常に引っ張り合っているのがエルトンの人生であるし、それを表現できる俳優はなかなかいないと思うんだ。

──映画の中でとりわけ印象的だったのが、「Your Song」が出来る過程です。バーニーの歌詞を前に、ピアノを爪弾くエルトンが徐々に曲を形作っていく……あの素晴らしい演出はどのようにして生まれたものでしょうか。

なるべくシンプルに仕上げるということを心がけた。というのも、本当にあの瞬間って「特別」だったと思うんだよ。もちろんそれは「Your Song」という曲の力でもあるのだけど、バーニー・トーピンという生涯の友人……ロマンティックな関係ではないけれども、あの2人の間に流れていたのは間違いなく「愛」だった。心からお互いをリスペクトし合い、敬愛していたからこそ成り立つ関係というか。幼少の頃、父親の愛に恵まれなかった彼は、生涯を通じて「愛」を求め続けてきた。そして彼が本当に必要としている「愛」は、バーニーとの間に流れていたわけだよね。ありのままの自分を受け入れ、どんな時でも支えてくれる友人っていう。そしてそれこそが愛なんだっていうこと。そこにエルトン自身が気づくという、象徴的な場面だったと思うんだ。

シチュエーションとしては、本当にありきたりで他愛のない日常の一コマなんだよね。お母さんも、おばあちゃんもバーニーも、同じ屋根の下でそれぞれの日常を過ごし、そばでピアノに取り組むエルトンには全く気を払っていない、演出する上では、その日常的なシチュエーションをできる限りシンプルに描いたからこそ、そこに突然訪れる「魔法のような瞬間」が、より際立ったんじゃないかな。


©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

──そろそろ時間が来てしまったようなのですが、今おっしゃった「愛」について最後にお聞かせください。エルトンは同性愛者であることをカミングアウトしていて、本作でもそのことはしっかりと描かれています。監督自身、このところ機運が高まっているLGBTの問題についてはどう捉えていて、それを映画の中でどう表現しようと思いましたか?

今はみんな、必要以上にセンシティブになっている。腫れ物に触るような感じでトピックを扱っているように感じることが多いかな。特に映像作品はそうだよね。今回、エルトンとジョン・リード(リチャード・マッデン扮するエルトンの元マネージャー&元恋人)のラブシーンを描いていて、それが大きな話題を呼んでいる。でも、僕にとってラブシーンが男性同士だろうが女性同士だろうが、男女によるものだろうが何も変わらないし、そこに大きな違いはないと思っている。2人の人間が愛し合っているシーンをただ撮っただけなんだよ。


ロケットマン
全国劇場にて公開中
監督:デクスター・フレッチャー『ボヘミアン・ラプソディ』 製作総指揮、監督
脚本:リー・ホール『リトル・ダンサー』
製作:マシュー・ヴォーン『キングスマン』シリーズ、エルトン・ジョン
キャスト:タロン・エガ-トン『キングスマン』シリーズ、ジェイミー・ベル『リトル・ダンサー』、
ブライス・ダラス・ハワード『ジュラシック・ワールド』、リチャード・マッデン「ゲーム・オブ・スローンズ」
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

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