『劇場版おっさんずラブ』監督が伝えたかった「人間愛」

『劇場版おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』の瑠東東一郎監督(Photo by Takanori Kuroda)

社会現象にもなったドラマシリーズが、映画になって帰ってきた。『おっさんずラブ』は、うだつの上がらないサラリーマン春田創一(田中圭)をめぐり、上司の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と後輩の牧凌太(林遣都)が「恋の鞘当て」を繰り広げるピュアなラブストーリー。

劇場版となる本作『劇場版おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』には、3人はもちろん、ドラマでお馴染みのキャラクターが勢揃いするほか、沢村一樹や志尊淳らが演じる新キャラクターも多数登場。笑いあり涙あり、映画ならではのサスペンスからスペクタルなシーンまで満載の、スケールのビッグな作品に仕上がっている。

都市の再開発や、中国企業の進出など現代日本が抱えるトピックを散りばめ、名画のパロディなど「遊び心」も忍ばせながら、やはり核となるのはこれまでと同様に人間愛。ドラマのラストで無事成就した、春田と牧の関係がその後どうなったのか、黒澤の新たな恋は始まったのか。そもそも「LOVE or DEAD(愛か、それとも死か?)」という意味深なタイトルに込められたメッセージとは……?

ドラマシリーズでも演出を手がけ、本作では監督を務めた瑠東東一郎に話を聞いた。

─ドラマ版『おっさんずラブ』が、ここまでヒットした理由はどこにあると分析しますか?

「ヒットした理由」について、僕が申し上げるのはおこがましいのですが……(笑)。ただ、田中圭くんをはじめ俳優陣やスタッフたちが共通認識として持っていたのは、「熱量はちゃんと通じるのだな」ということですね。扱っているテーマは見方によってはデリケートな側面もあるのですが、だからこそ本当に全力で取り組まなければならない。それは、笑えるシーンであっても、シリアスなシーンであっても同じなんです。脚本も演出も、演技だって「嘘をつこう」と思えばつけるわけですから。

─というと?

例えばラブシーンを演じるとき、「好きなふり」なら簡単にできる。「でも、それはやめよう」と。どんな形の恋愛にせよ、少なくともその相手を「1人の人間」として、本気で愛している関係をしっかり描く。現場にいた僕たちは全員そう思っていましたし、それがテレビの画面を通して視聴者にも伝わると信じていたんですよね。そういう熱量が、ちゃんと伝わったからこそヒットというものに繋がったのかもしれないですね。僕らとしては、ヒット云々は抜きにして「伝わった」という事実を嬉しく思っていました。



─では、本作『劇場版おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』の脚本を読んで、どんな作品にしたいと監督は思いましたか?

映画ならではの壮大な映像を『おっさんずラブ』で見せるのであれば、それがちゃんと「笑い」になってほしいと思いましたね。全力で取り組んでいる姿の可笑しさというか、ズレの面白さみたいなところこそ『おっさんずラブ』の真骨頂ですからね。

ただ「映画だから」ということに対して、必要以上に肩肘張らないものにしたいなと。もちろん、気合いは充分なのですが(笑)、やることは今までと変わらず真っ直ぐブレないように。それをでっかい画面で表現できたらいいなと。

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