サマソニ現地レポ Perfumeの最新モード、音を可視化する「身体拡張表現」

Perfume(©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.)

Suchmosのステージが終わり、彼らの楽器や機材が片付けられるとそこは「お立ち台」が3つ並べられただけの、極々シンプルな空間となった。サマソニ最終日、炎天下のマリーンステージに続々と人が集まってくる。トキモンスタやアラン・ウォーカー、ゼッド、そしてザ・チェインスモーカーズとダンス・ミュージック〜エレクトロ勢が並ぶ中、14時という時間帯ではあるが日本人アーティストとしてのトリを担うのは、広島県出身のテクノ・ポップ・ユニットPerfumeだ。

長い下積みを経て2007年に「ポリリズム」で注目を集めて以来、常に進化を遂げてきた彼女たち。とりわけ今年に入ってからの躍進っぷりは、目を見張るものがある。まず、昨年末から新年にかけて神奈川・横浜アリーナにて行われたファンクラブ「P.T.A.」会員限定のカウントダウンライブでは、ドコモとのコラボレーション・プロジェクト「FUTURE-EXPERIMENT VOL.04 その瞬間を共有せよ。」が実施され、渋谷のスクランブル交差点と横浜アリーナとを最新鋭の通信テクノロジーで結び、Perfumeの3人と「平成最後のカウントダウン」を共有するという前代未聞の試みが行われた。

また2〜4月にかけては、昨年8月にリリースされた通算7枚目のオリジナル・アルバム『Future Pop』を携えたアジア・北米ツアーを敢行。その合間には米国最大級の野外フェス、コーチェラに出演するという快挙を成し遂げたばかりか、そのライブの模様は全世界に配信。昨年末のNHK紅白歌合戦の時と同様、真鍋大度率いる映像チームRhizomatiks Researchによるディープラーニングを導入した画期的な映像で、世界中を驚愕させたのも記憶に新しい。今後の予定としても、10月には「LINE CUBE SHIBUYA」として新たに生まれ変わる渋谷公会堂の“こけら落とし公演”が、来年2月には初の全国4大ドームツアー開催が決定済み。2020年東京オリンピックの開会式出演「最有力候補」とも囁かれているPerfumeの「現在」を目にするうえで、サマソニは絶好の機会だったといえるだろう。


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サウンド・チェックとして、彼女たちの人気曲「Dream Fighter」のオケが爆音で流れ出した瞬間、アリーナにいたオーディエンスたちが一気に前へと突進しステージ前方はすし詰め状態に。この時点ですでに全力で踊っている人たちもいる。そんな中、アルバム『Future Pop』の冒頭を飾るインスト曲「Start-Up」が流れ出し、蛍光イエローの衣装に身を包んだあ〜ちゃん、のっち、かしゆかが現れた。まずは昨年のアルバムツアーと同じくタイトル曲「Future Pop」からこの日のパフォーマンスはスタート。

コーチェラでは高さ2メートルほどの半透明パネルをステージに複数持ち込み、そこに映像を投影するなどの演出を試みていたが(強風で飛ばされるという、ハラハラドキドキのハプニングもあった)、この日ステージにあったのは、冒頭で述べたように3つの「お立ち台」のみ。映像はバックスクリーンに映し出す方式で、真っ昼間なのでレーザーのような凝った照明ももちろん使えない。フェスという限られた条件の中、必要最小限に絞り込んだ演出にせざるを得ないのだが、それでこそ3人の「真価」を発揮できるというもの。広島アクターズスクール時代からの師、MIKIKO(ELEVENPLAY)仕込みの伸びやかでキレのあるダンスを踊り始めると、モノクロで描かれた「未来都市」のCG映像が、あたかもそれに反応しているかのように動き出す。

続く「If you wanna」も『Future Pop』に収録されたナンバー。2003年の「スウィートドーナッツ」以来、彼女たちのすべての楽曲を手がけるプロデューサー、中田ヤスタカがフューチャー・ベースを大々的に取り入れた楽曲であり、ピッチ加工をしたキュートなメロディと、胃がせり上がってくるような分厚い低音のコントラストが刺激的だ。「Pick Me Up」は前作『COSMIC EXPLORER』(2015年)に収録され、伊勢丹新宿店とのコラボにも起用された楽曲。細かいポジション・チェンジにより立体的に魅せるフォーメーションと、優雅で官能的な手の動きをフィーチャーしたヴォーギングのような振付は、まるでインスタレーションのよう。しなやかで美しい動きのかしゆか、強靭かつダイナミックな表現ののっち、弾けるようにキュートなあ〜ちゃん。歳を重ね「エレガンス」に磨きがかかった3人のダンスは、音を可視化する「身体拡張表現」の究極の形ともいえるだろう。


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Perfumeの「最新モード」に酔いしれていると、「ワンルーム・ディスコ」のイントロが流れ出し一気に10年前へとタイムスリップ。当時、この曲が収録された2ndアルバム『⊿』(2009年)がリリースされた時は、その攻めまくったサウンドにPerfume本人たちすら戸惑ったというが、そこからのさらなる「飛躍の軌跡」に思いを馳せると胸が熱くなる。

「かしゆかです」「あ〜ちゃんです」「のっちです」「3人合わせて、Perfumeです!よろしくお願いします」という、お決まりの挨拶のあとは新曲「ナナナナナイロ」へ。来月リリースされる、彼女たち初のベスト・アルバム『Perfume The Best “P Cubed”』にも収録されている楽曲で、ヨナ抜き音階を用いた“和”な響きや、反復するフレーズを用いた旋律が「575」(2010年『JPN』収録)や「Handy Man」(2013年『LEVEL3』収録)を彷彿とさせる。

続く「エレクトロ・ワールド」(2006年)は、彼女たちのライブ・レパートリーの中では最も古い楽曲。前回のツアーで映像がアップデートされ、昨年の紅白でも披露されるなど特別な位置にある。無機質だけど温かく、クールだけど親しみがあり、先鋭的だけどどこか懐かしい。変化や進化を繰り返しながらも変わることのない、そんなPerfumeの魅力をこの曲は象徴しているのだ。

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