The 1975サマソニ現地取材「ロックンロールのすべてを表現したかった」

The 1975のマシュー・ヒーリー(Photo by Kana Tarumi)

サマーソニックの出番前に、幕張メッセでマシュー・ヒーリーの現地取材を実施。飛躍し続けるThe 1975のフロントマンが、ニューアルバムを含む今後の展望について語ってくれた。

The 1975はサマソニと一緒に成長してきた。日本初ステージは2013年のサマソニ。当時の彼らはまだアルバム未発表で、アイドル顔負けの華やかさもあり、一部ではハイプ呼ばわりもされていた。しかしこの頃から、アーティスティックな佇まいや、ポップで軽やかな楽曲は魅力たっぷり。それもあって、同年にSONIC STAGEのトップバッターを務めていたのが、2年連続の出演となった2014年にはMARINE STAGEを任されるという、2010年代のUKバンドでは異例のスピード昇進を果たしている。

2014年のライブ終了後、幕張で取材したときのマシュー・ヒーリーは、韓国のフェスでクイーン+アダム・ランバートと同じステージに立ったことや、人生初ライブだったというマイケル・ジャクソンの1997年ウェンブリー・アリーナ公演について和やかに話してくれた。「もし自分でフェスを主催するとしたら?」という質問には、アークティック・モンキーズのように大トリを張れる若手バンドがいないと嘆いたあと、ヘッドライナーとしてフリートウッド・マックと(1年半後に亡くなる)プリンスの名前を挙げている。さらに話題は、スカイ・フェレイラとの交流やジェイムス・ブレイクにまで及んだわけだが、この振れ幅こそが従来のインディーバンドにはなかったThe 1975の強みでもある。

その後、2ndアルバムを提げての2016年を挟み、今回で4回目のサマソニとなったThe 1975は、3rdアルバム『Brief Inquiry Into Online Relationships』でいよいよ覚醒し、世界最高のロックバンドになったことを証明するようなライブを見せてくれた。詳細はレポートに譲るが、狂った時代と向き合うがごとく、強烈なまでに“今”を感じさせるステージは、SNS上でも「ベストライブ」と絶賛の嵐。ドバイでの抗議にも明らかなように、今の彼らは大きな役割を引き受けようとしており、そのスケール感と包容力にオーディエンスも引き込まれていた。

以下のインタビューは、ライブ開始の約1時間前に収録したもの。大吟醸の一升瓶をラッパ呑みしながら、祈り叫ぶように歌うマシューを先に見ていたら違う質問を考えたかもしれないが、5分の取材時間でいろいろと聞くことができた。今回のライブでもハイライトとなった楽曲の背景や、ニューアルバムの制作状況について尋ねたほか、5年前と同じ質問も投げかけている。


―最近のライブでは、最新作『Brief Inquiry〜』の世界観が存分に反映されていますよね。最初に「Sincerity Is Scary」のパフォーマンス動画をネットで見たときはびっくりしました。

マシュー:そう、現在のステージプロダクションは、ミュージックビデオの世界観を表現している。「Sincerity Is Scary」のMVは、ぼくの大好きなミュージカル映画『My Sister Eileen』から発想を得たんだ。ふたりの男が踊る有名なダンスシーンがあって、その場面が本当に大好きでさ。ぼくはあの曲で、ロックンロールのすべてを表現したかった。とにかくカッコよくあるのは大変だってこと。そんな脆さや、誠実さ、謙虚さっていう、ロックンロールの美しい部分を詰め込んだ。それから、ジャミロクワイ「Virtual Insanity」からの影響も大きい。ミュージシャンになるまで、ぼくはずっとダンサーになりたかったんだ。だから、ダンスはぼくの人生の重要な部分だったりする。


Photo by Kazushi Toyota

―あの曲を歌うとき、ピカチュウのような帽子をいつも被ってますよね。

マシュー:昔、劇団に所属していた時、これに似たうさぎの耳の帽子をつけて演じていたときがあったんだけど、その頃は自分のアイデンティティについて悩んでいた時期で。自分が何者かわからなくて、怖かった。だからぼくにとってあの帽子は、弱さだとか、傷つきやすさの象徴なんだ。あの帽子を被っていると、自分が子どもだったときの感覚を取り戻せる気がする。もっと奔放な気持ちになれるというか、それが気に入ってるよ。

Translated by bacteria_kun

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