制作の「現場」から見たサマソニの20年

ビヨンセは正真正銘のエンターテイナー

ー2007年は、アークティック・モンキーズの大トリ起用が話題になりました。

亀廼井 大阪のお客さんは(別日のトリを務めた)ブラック・アイド・ピーズのほうが盛り上がっていた印象です。甲乙つけがたいですが。

ー東京と大阪で、お客さんのノリや好みも違うものですか?

亀廼井 2008年から2年間マリンスタジアムを担当したんですが、大阪のお客さんのほうが熱い感じがしますね。東京と比べて声もずっと大きいし、みんな元気に楽しんでる。


2008年


2009年

ー東京を担当した2年間はどうでした?

亀廼井 2008年は、コールドプレイとアリシア・キーズが急遽コラボしたのが印象的でしたね。翌年は木~土曜までの3日間、朝5時くらいまで照明プログラミングを付き合ってたのでグッタリしてましたけど、いいショーが目白押しでした。特に凄かったのはビヨンセ。R&Bはそんなに聴いてこなかったんですけど、正真正銘のエンターテイナーだと思いましたね。そのあと単独公演も担当したら、スタッフも意識の高い人ばかりで、彼女たちのプロフェッショルぶりをますます思い知りました。

ーそして、2010年に大阪へ戻られると。

亀廼井 そうですね。しばらくはプロダクション(制作)と海外バンドのケアを担当していたんですが、2012年の大阪初日、大きな落雷がありまして。「これはヤバい」とライブを中止して、お客さんも出演者も避難させたんですけど、終演後に打ち上げるはずだった花火に雷が落ちて暴発したり、かなり危険な事態になったんですよ。だから、今後そういうトラブルが起きても迅速に動けるよう、会期中は本部入りするようになったんです。

ーお話を伺っていると、多岐に渡る業務を経験してこられたんですね。

亀廼井 今は(スタッフの体系が)もっと細分化されてますけど、最初の頃は(会期中に)大阪会場にいる社員が僕だけだったんですよ。だから、楽器がどうとか楽屋がどうとか、そういうのを一人で全部こなしてきました。もちろん、現場は常にオーバーヒート状態。(会場が)舞洲に移った2007年頃には、こちらに来る社員が増えて分業もできるようになったけど、あの頃は本当に酷かった……。

ーかなり実感のこもった話ですね(笑)。2010年代のライブで印象的なのは?

亀廼井 2014年のクイーン+アダム・ランバートかな。映画『ボヘミアン・ラプソディ』が話題になる前ですけど、固定ファンの方々が楽しみにしているのが伝わってきましたし、僕自身も改めてバンドの凄さを思い知りました。


2010年


2011年


2012年


2013年


2014年


2015年


2016年


2017年


2018年

ー2019年は3日間での開催となります。

亀廼井 個人的な趣味で言えば、スノウ・パトロールとロバート・グラスパーが楽しみですし、アラン・ウォーカー、ゼッド、トリのチェインスモーカーズと続く三連発は、EDMフェスでもなかなかないブッキングだと思います。あとは「名前も聞いたことなかったけど、このバンドいいね」みたいな感じで、新しい音楽に触れる人、そこから音楽業界にまで興味を持つ人が少しでも増えてくれたら本望です。


2019年

ー仕事で達成感を覚えるのは、どんな時ですか?

亀廼井 お客さんが大きく盛り上がった瞬間もそうだし、「とてもいいショーができた、ありがとう」と出演者に言ってもらえた時も報われますね。気持ちよく演奏してもらうために、彼らの世界観を可能な限りステージで再現してあげるのが制作の仕事なので。あと個人的には、事故なく終えてホッとする瞬間が一番うれしいです。

ー会期中は緊張の連続なんでしょうね。

亀廼井 そんなにライブを観に行く余裕はないので、事故や揉め事がないかとか、そういうことが気になっちゃってますね。まあ、好きなやつはこっそり観に行ったりするんですが(笑)。たまに音楽を仕事にせず、他の仕事をしながら好きなライブに行くような人生も考えますけど、やっぱり作る側にいられるのは幸せだなと思います。



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SUMMER SONIC 2019
期間:2019年8月16日(金)、17日(土)、18日(日)
会場:TOKYO=ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
OSAKA=舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
http://www.summersonic.com/2019/

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