マシン・ガン・ケリー、傷つきながらも必死に生きる若きラッパーの生き様

彼が27歳まで生きられたのは、驚くべきことのように思える。クロウは、「みんな心配していると思うよ。彼が自分の夢を叶える前に、自分で自分の身を滅ぼしてしまうんじゃないか、ってね。でもそれは、MGKファンとして通らなくちゃいけない道なんだろう」と言う。危険度の高い不運の連続と、大胆不敵でシリアスなパーティーを続けたおかげで、彼は傷つき続けた。昨年、MGKはデンマークで、TVで見ていたスポーツを真似しようとして捨てられた(「フェンスか何かの上を飛ぶヤツってなんだっけ? ハードル?」)。「リアルなオリンピックを見たいか?」と聞いたMGKは、車の上に登った。その際、雨が降っていることに気がつかなかったと言う。「俺の足はフロントガラスに落ちて行って……コンクリートに顔面をヒットしたんだ」と、MGKは当時の危険な様子を語る。その後、顔を縫い、腕にはギプスをつける事態になったが、次のショウは開催された。

MGKは成長したが、悪さを控えつつも未だにハードに生きている。ニューヨークからボルティモアまで一晩かけて移動していた際、朝5時になっても彼の乗っているバスは唸り声をあげていた。「ボビーヒル」と呼ばれるもの悲しげな照明係が彼のためにジョイントを巻いている間、MGKはエレクトリック・ギターとミニ・アンプを持ち出し、アルバム『bloom』に収録されているポップ・パンクソング「Let You Go」に入る前、「Voodoo Chile」をスロー・バージョンで差し込む演奏を試していた。彼は楽曲に「ギターが多すぎる」と感じていながらも、ヒットを願った。そしてその考えにはこう返答した:「音楽に、音楽が多すぎるなんてことはあり得るのか?」

シロックのショットが注がれ、MGKと彼のバンドが「Golden God」をシャウトし、筆者の顔にラップを浴びせている間、『bloom』のトラックがバスのサウンドシステムに響き渡っていた。一通り終わると、彼らは再びプレイし、パフォーマンスを繰り返した。Rookがウォッカのボトルから直飲みをする前に、「Yeah,ビッチ! 」と叫ぶ。「これが俺たちの音楽だぜ!」

MGKに対して、絶対に言ってはいけない言葉がある。それは、「あなたの古い作品の方が心に残っているの。それが大好き」ということだ。これは彼がソールドアウトとなったボルティモアのショウが終わった後、30代やそこらのブロンドのファンに、ストリートで無駄に言われた言葉そのものだった。パフォーマンスは非常に上手くいったのだと言う:彼と彼のバンド陣は、blink-182の「All the Small Things」をカバーした。サウンドが不調になると、彼はアカペラでフリースタイルを披露した。しかし彼は、懐かしさを褒めるファンの賞賛に、明らかに嫌な顔をした。そして、「俺は成長した。いつまでも壊れたままじゃいられないんだよ」と、ファンに向かって答えた。彼女は新しい曲も好きだと伝えたが、もう手遅れだった。

彼はバスに戻った後も、例のファンの言葉が頭から離れることはなかった。「10種類のフレーバーウィード」だという強力なウィードをファンからもらい、それを試しても、やはり忘れられなかった。そして、「何なんだよ!」彼は叫ぶ。「俺はすべてをかけた。あのステージにすべてをかけていたんだ! あれは間違ってる! あいつらは知りもしないくせに! ステージにたくさんのものを残して来たんだから、40歳の俺だって同じ道を歩いているわけがないんだ! 俺は毎日あそこで戦っているんだ! それの何が不満なんだ?」と続ける。バスの角には、MGKのショウに足繁く通っている若い女性がいた;バンドメンバーは彼女を、『あの頃ペニー・レインと』に倣って、ペニーと読んでいた。悲しんでいるMGKを見た彼女は、涙を拭いた。

「あのアルバムには、俺の魂が込められていたんだ」と、彼は続ける。MGKのツアーマネージャー、アンドレ・シスコは、例のファンがまだアルバム全体を聴いているはずがないことを指摘したが、それも軽くあしらった。そして、さらに彼は続ける。「みんなに楽しい気持ちを与えたんだ!どの曲でも惨めな気持ちになんてなりたくないから! 誰もがみんなヘロイン中毒なわけじゃない。みんなに何か感じてもらえるように作ったんだ」


Michael Bailey-Gates

そしてドスンとソファに腰を落とした。「奴らは何も知らないんだ。俺を打ちのめしてるってことも。俺はこれで生きてる! それを破り裂いて、俺の魂を食っちまうんだ」しかしその数分後、叱咤激励と合法大麻のおかげで、彼の不機嫌も収まってきた。話題はフー・ファイターズがウェンブリー・スタジアムで一番の音を出したバンドとして世界記録を持っている話になり、「俺たちはウェンブリー・スタジアムですぐにやるんだ」と言っていた。

MGKは、すぐにそうしたいと思っている。さらに、他にもやりたいことが多々あると言う。ロックや楽器を取り入れたい。「史上最高の1人」になりたい。コーチェラでプレイをしたい。数年前契約を果たしたショーン・コムズに関しては、彼がプライベートで褒めているにも関わらず、マスコミは何度も繰り返し取り上げることに対して思いがある(「俺は彼に、言っていたことを認めてもらいたい。その信念からもう一歩踏み出してほしい、と思ってる」)。

しかしながら、MGKは「今、受け入れられているかどうかなんてどうだっていい。言わば、カッコいいキッズだって? キッズなんてクソ食らえだ!」とも言っている。

つまり、MGKのリアルなゴールはどこにあるんだろうか? 「またうなだれて生きていたくないんだ」と、彼は答える。そして一息つき、顎を掻きながら再び考え、「実は、何も気にしていないんだ。またチーズバーガーを買えるか悩むとか、そんなことはしたくないな、ってくらいかな」と、笑みを浮かべて言った。

Translated by Leyna Shibuya

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