米大統領選密着ルポ アンドリュー・ヤンによる奔放な選挙活動の内幕「私はネットの申し子」

トランプ支持者を惹きつけるヤンの魅力

主要メディアのほとんどに無視されたため、ヤンは自身の主張を伝える別の手段を探す必要があった。それがポッドキャストだった。初期のポッドキャストの中に、2018年6月にリリースした著名な無神論者サム・ハリスとの対談がある。ハリスは『The End of Faith: Religion, Terror』や『Future of Reason and Waking Up: A Guide to Spirituality Without Reason』などの著者として知られる。ハリスのポッドキャストには数百万人以上のリスナーが付いているとも言われている。結果としてヤンの発するあやふやなメッセージは、長時間の対談形式のポッドキャストにマッチした。彼は好きなだけの時間をかけて、労働参加率、AI、トラック運転手などについての不安を煽るような未確認の事実を次々と並べたのだ。

ハリスとの対談のおかげで、ソーシャルメディア上の新たなフォロワーを獲得し、寄付金も増えた。このためヤンは、選り好みせずあらゆるポッドキャスト番組に出演した。そして新しい番組が流されるたびに増えていくネット上のフォロワーは、ヤン・ギャングと呼ばれるようになった。

現状のヤンの支援者数は追い切れていないが、ポッドキャストをきっかけにヤンを知った者も多いという。彼らは、ヤンが自分の考えを内容が精査されたテーマとしてまとめたり、テレビ向けのキャッチフレーズに要約したりしない点を評価している。また、彼が鏡に映る自分の姿を見て将来の大統領像を想像しているのではなく、立候補の理由は彼自身の政策案を国策に採り入れてもらうためだと述べている点も、支援者は称賛している。

また立候補するには知識も経験もないという厳しい状況もあった。彼に耳打ちする広報担当者もいなければ、発言をアドバイスする世論調査専門家もいない。「彼は政治家とはかけ離れています」と、ヤン陣営のボランティアでトランプに投票したニューハンプシャー州のジーン・ビショップは言う。「彼は受けた質問に対して、正面から答えます。彼は新鮮な存在です」

大統領候補者としてはトランプと大して変わらないヤンは自分自身を、システムを再編し行き詰まった政党政治を打破することのできる門外漢と位置づけた。「ヤンもトランプも同じようなやり方ですが、ヤンのほうがより思慮深く真剣に取り組んでいます。国民は、現状のシステムを改革してくれる人間の登場を待ち望んでいるのです」と、ハーバード大教授で政治活動家のローレンス・レッシグは言う。ヤンによれば、「私がドナルド・トランプに投票した時に、あなたのような人がいてくれたら良かったのに」と言ってくれる有権者も多いという。

Translated by Smokva Tokyo

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