米大統領選密着ルポ アンドリュー・ヤンによる奔放な選挙活動の内幕「私はネットの申し子」

ヤンを支えるチームの面々

筆者はこの3週間、ニューハンプシャー、ワシントンDC、サウスカロライナと動き回るヤンの選挙キャンペーンに同行した。ヤンは筆者に対し、彼と彼の小規模ながら成長を続けるチームと移動を共にし、身内の会合にも同席するよう求めた。さらに彼が出演するテレビ番組『The Late Show With Stephen Colbert』の楽屋にも招かれた(読者の皆さんに伝えておくと、楽屋に用意されていた軽食は素晴らしかった)。筆者がヤンを追うのは、多くの皆さんが抱いているのと同じ理由による。つまり「彼はいったい何者だ?」という疑問に答えるためだ。

しかし筆者の好奇心には、罪悪感も混じっていた。前回の選挙で極論を唱えるある候補者が登場し勢いをつけ始めたが、筆者は彼を、まぐれ当たりのペテン師として気にもかけなかった。その候補者とはドナルド・トランプだったのだが、今回は何かを学ぶことができるかもしれないと思った。アンドリュー・ヤンの言うロボットが支配するこの世の終わりは本当にやって来るのか? 彼は他の候補者が触れようとしない真実を語っているのか、それともTEDカンファレンスでよく語られる職業の剥奪を持ち出して人々に恐怖を植え付けるテクノ未来主義者の単なる受け売りか? 一時的なものかもしれないが、彼の人気は米国の有権者の期待を表しているのだろうか?

クライバーン主催のFish Fryイベントでヤンが「できるだけ早期に私たちの社会と経済を発展させなければなりません。この私こそがその任務の適任者です。なぜならドナルド・トランプを正反対にすると、数学が好きなアジア人になるからです!」とジョークを飛ばすと、観衆は拍手喝采を送った。ジョー・バイデンですら隣にいる友人の肩を叩いて満足気にうなずいた。ホテルへ戻る車中、広々としたシボレー・サバーバンの助手席に座ったヤンは、まだブツブツ言っている。ヤンの選挙参謀兼運転手のザック・グローマンは、ヤンがステージ上で両手を大きく広げて「キリストのポーズ」を取り、観衆から大ブーイングを浴びたことをからかった。

「キリストを真似た訳ではない。あれはクリードのリードシンガーのつもりだった」とヤンが言うと、本人を除く車内は爆笑に包まれた。

「いや、キリストのほうがよかった」とグローマンは言う。「彼に従え」

「両手を大きく広げ……全てが変わった……」とヤンは、クリードのヒット曲を歌い始めた。

バックシートで筆者は、選挙キャンペーンのドキュメンタリー映画の製作者の横に座り、グローマンがその晩早くヤンに言ったことを思い返していた。元ウォールストリートの投資家だったグローマンは、過去に政治経験はない。「僕がよく言うのは、“ただ善人になるのでなく、他人と違う人間にならなければならない”ということ。ああ、でも君は既に独特な人間だね」

Translated by Smokva Tokyo

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